“オーナーシップ”が成功に導いたオンボーディングプログラム刷新の裏側

Interviewee

荻野 有香

伊藤 寛幸

後藤 秀臣

杉浦 佳織

2021.8.23

カオナビでは、ここ1年でオンボーディング施策の見直しを実施しました。

全社オンボーディングの見直しを担当したのは、人材戦略室の荻野有香。ハイブリッド勤務(※)の導入をきっかけに、従来の施策の刷新に踏み切りました。

また、部門別のオンボーディングについても、昨年セールス組織で現場主導の大幅な見直しを実施。担当したのは、営業企画グループマネージャーの伊藤寛幸、フィールドセールス1グループ・マネージャーの後藤秀臣、人材戦略室・杉浦佳織です。

新入社員が一日も早く力を発揮できるようにするために、どのようなプロセスでオンボーディングや研修の改善に取り組んできたのか、4人に振り返ってもらいました。

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「5つの壁」で全社オンボーディングの課題を整理

まず、全社オンボーディングの見直しについて、担当した荻野さんにお話をお伺いします。全社オンボーディングの目的はどのように設定しているのでしょうか?

荻野

まず、弊社のオンボーディング期間は入社後3カ月間としていて、図のような流れになっています。私が担当している全社オンボーディング施策では、「個性を活かして現場で活躍してもらうこと」を目的に設定しています。そのためにつくりたいのは、必要なフォローを必要なタイミングで行える体制。入社時点で必要な情報をきちんと渡すことに加えて、社内のメンバーと適切に接点を持ってもらうことを重視しています。

人材戦略室
荻野有香
新卒・中途の人材紹介会社を経験後、HR Techに興味を持ち、2018年3月カオナビへ入社。現在はエンジニア採用やオンボーディング・社内勉強会の運営など育成を担当。

では今回、全社オンボーディングを見直した背景を教えてください。

荻野

緊急事態宣言に伴いテレワークが始まって以降、日々のちょっとしたコミュニケーションの機会が失われてしまい、社内の共通言語などの今まで職場で自然と吸収できていたものを学びづらくなってしまいました。既存メンバーからも、「新入社員が困っているかどうかわからずサポートが難しい」という声が上がっており、人事として早急に対応する必要があると感じたんです。また講師も入社者も出社し、すべてリアルで実施していた開催方法自体にもリスクが生じました。

全社オンボーディングの見直しにあたり、課題はどのように整理したのですか?

荻野

Google社が採用していたという「五つの壁」という概念を使って整理しました。

  1. 準備の壁:入社初日に十分な受け入れ態勢が整っているか
  2. 人間関係の壁:受け入れ側にサポートする姿勢があるか
  3. 期待値の壁:会社が求める期待値とメンバーの意思は一致しているか
  4. 学びの壁:研修やOJTなど、必要な知識を学べる体制が準備されているか
  5. 成果の壁:早期に成功体験を積み上げられるよう、フィードバックを得られる環境があるか
荻野

まずはどのような問題を入社者側が感じているのか実態を掴むためにアンケートを実施し、結果を分析しました。当社の場合、新入社員を積極的にサポートしてくれるメンバーが多いようで、「準備の壁」「人間関係の壁」については、大きな問題はなさそうであることがわかりました。その一方で、「期待値の壁」「成果の壁」については、テレワークの導入に伴い日々のコミュニケーションが減少していたため、入社後に何を期待するのかをすり合わせる機会を仕組みとしてつくる必要があると考えました。

また、「学びの壁」についても対策を講じました。対面でのコミュニケーションの機会が減った分、重要な情報は確実に理解してもらう必要性があり、テレワークに馴染む新しい方法としてeラーニングの導入を進めました。

必要なフォローを、必要なタイミングで行える体制に

それらの課題に対して、どのような対応を行ったのですか?

荻野

「学びの壁」に関しては、講義形式で行なっていたオリエンテーションを一部動画にしました。対面で説明していたときと違い、いつでも内容を見直せるようになったので、知識はより定着するのではないかと期待しています。

「期待値の壁」「成果の壁」に関しては、入社3ヶ月目で本部長と入社者が面談する「オンボーディング・フィードバック」の機会を設けました。すでに経験した新入社員からは「直接フィードバックがもらえる機会は嬉しい」「試用期間が終わるタイミングで、今後の良い指針を得られた」「部の今後の展開が聞けたことで、向かうべき方向がクリアになった」というポジティブな声が出ています。本部の執行責任者と話すことは刺激にもなりますし、エンゲージメント向上にもつながっていると思います。

全社オンボーディングと同時に進行している部門別の研修については、どのように内容が決められているのでしょうか。

荻野

部門別研修は各部門が主導して内容を決定しています。入社者が配属先組織で業務遂行するのに必要な、具体的な知識やスキルを装着する目的です。セールス組織の研修も、人材戦略室だけでなく部門内のメンバーが中心となって見直しを進めてくれました。入社者が最短で活躍できるよう、現場で役立つ学びが詰まった内容に仕上がっていると思います。

最後に、荻野さんが考える今後の人材開発の課題を教えてください。

荻野

拡大期にいるカオナビのフェーズですから、マネジメント層のさらなる強化でしょうか。お陰様で事業も組織も拡大してきているため、マネージャーの数も増えてきており、ノウハウ共有ができていなかったり、属人化が進んでしまっているケースもあります。

そうした企業のフェーズや状況を正しく把握しながら、従来実施していた研修だけではなく、その時その時に合わせて、必要なオンボーディングや研修のあり方を考え続け、提供していきたいと思っています。

企画と現場の意見が一致。わずか1ヶ月でアカウント本部の研修を刷新

ではここからは、セールス組織の部門別研修の見直しを担当した3人にお話を聞きたいと思います。まず、研修を見直そうと考えた背景を教えてください。

伊藤

カオナビのセールスは、人事の課題をきちんと理解した上でサービスの機能を業務に合わせて提案する必要があるため、難易度は決して低くはありません。セールスパーソンを質・量ともに強化していくためには、新しいメンバーがしっかり成長していける仕組みを構築し、幅広い人に活躍してもらえる状況をつくる必要があると考えたんです。

アカウント本部
営業企画グループ マネージャー
伊藤寛幸
「仕事を楽しむ人を世の中に増やしたい」という思いから、新卒で求人メディアを運営する大手人材会社に入社。営業・営業企画・事業企画を経験したのち、2020年4月にカオナビに入社。

後藤

伊藤がその話をしていた頃、すでに現場ではセールスの人数が増え始め、効率的な育成方法を模索していました。今後さらに規模が拡大していくのであれば研修の見直しは欠かせないと感じていたので、現場と企画側の方針が一致し、動き始めることになりました。

アカウント本部
フィールドセールス1グループ マネージャー
後藤秀臣
IT業界にて広報と営業を経験し2019年10月にカオナビに入社。中小から大手企業まで、導入検討中のお客様への営業を幅広く担当。2021年1月よりマネジメント業務へ携わり、組織がスケールするための仕組みづくりへ注力。好きなことは「誰かのために考えること」。

杉浦

私は人材戦略室のメンバーとして現場に過度な負担がかからないように、研修コンテンツの取りまとめなど、サポートを担当していました。また、オンボーディング中の入社者との1on1は私が行っていたので、そこで聞いた声を随時共有するようにしていました。

人材戦略室
杉浦佳織
新卒で採用コンサルティング会社へ入社。セールス、サポートなど幅広く経験した後、Webサービスの会社に人事職で転職。その会社がカオナビユーザーだったことからカオナビに興味を持ち、2019年6月にカオナビに入社。現在はビジネスサイドの採用、オンボーディングを担当。

研修の見直しはどのような手順で進めていったのですか?

伊藤

最初に現状整理を行い、どのように仕組み化できるかを話し合いました。またセールス研修を卒業できる基準を決め、最後に実際に入社者と日々やりとりをするメンター社員用のガイドラインを制定しました。

現状整理については、最初に現場メンバーからマネジャーまで幅広くヒアリングし、カオナビのセールスに必要な知識・スキル・スタンスを改めて洗い出しました。ここで得た情報をもとに既存の研修を肉付けする作業は、後藤さんが担当してくれました。

このとき、業務を遂行する上で重要な資料を一箇所にまとめた「トラノマキ」を制作しています。営業に必要な情報が一か所にまとめられているので、研修を終えた後でも、経験の浅いメンバーが必要な知識にアクセスする際に役立っていると思います。

卒業基準の明確化に伴い、ロールプレイングの質が向上

後藤さんはどのように研修コンテンツを見直したのですか?

後藤

これまでOJTを通じてたくさんの入社者を見てきたので、躓くポイントはよく理解していました。その中で研修で解消できるポイントを明確にし、そしてヒアリングで洗い出した「知識・スキル・スタンス」を含める形で、コンテンツを整理していきました。

伊藤

後藤さんがかなりスピーディーに進めてくれたので、作業はわずか1ヶ月で完了しました。短時間で仕上げたにもかかわらず、お互いの考えがほとんどずれない形で完成して良かったです。

その次に取り組んだのが、オンボーディングの卒業基準の制定です。それまでは本部長が相手のロールプレイングに合格すれば卒業できたのですが、判断基準が曖昧だったので、入社者側もどこまで準備したら良いのかわからない状況でした。

そこで、卒業時には確実に一定のレベルに到達できるよう、誰が見ても同じ基準でチェックできる合格基準を定めました。今はマネジャーが最終ロープレの相手を務めるケースが多いです。自分の苦手なポイントをチェックしてくれそうなマネージャーに相手をお願いする入社者も増えています。

杉浦

合格基準を定めるために、この3人で試行錯誤を重ねました。特に最終ロープレには明確な基準をつくり、一人前のセールスに必要な基準を様々な視点からチェックできるようにしました。また、ロープレの実施者だけではなく、受ける側の先輩社員にも事前に共有し共通認識を持つことで、今では現場できちんと機能していると思います。

その後、メンター向けのガイドラインも作成したのですか?

伊藤

そうです。入社者と最も頻度高く接するのはメンターなので、研修の効果を高める上でメンターのアクションは非常に大切です。入社者に対して教えるべきポイントを標準化したガイドラインを後藤さんに作成してもらいました。

後藤

新入社員はオンボーディング期間中、ほとんど毎日メンターと話しています。以前は接する頻度にばらつきが見られましたが、メンターとして見るべき点が明確になった結果、距離は縮まったように思います。かつては接し方がよくわからないと思っていた人も、入社者としっかり向き合ってくれるようになり、メンターの目線が上がったのを感じますね。

“カオナビらしい”研修をつくるのは、一人ひとりのオーナーシップ

研修の見直しを経て、手応えはいかがですか?

杉浦

入社者の皆さんは口を揃えて、「こんなに研修制度が整っていると思わなかった」と言います。「小さい会社なのですぐに現場に放り出されると思ってたけど違った」と。「できるやつだけが残る」のではなく、せっかく入社いただいた皆さんが活躍するまでの前提を、環境としてしっかり提供できるようになったことは、事業にとっても価値があると思っています。

後藤

研修を終えた社員が商談をした後、私にする質問の質が変わりましたね。昔はカオナビの細かい機能に関する確認や質問が多かったのですが、今はお客様の質問に対する回答へのアドバイスや、最終提案に関する相談が多くなりました。入社してから一人前になるまでの期間が短くなっていると感じます。

研修を見直した成果が出ているのですね。成功要因は何だと考えますか?

後藤

この3人がオーナーシップを持って進められた点です。この会社を良くするにはどうするべきかを、それぞれのメンバーが考えながらやってこれた。その結果、カオナビのバリューである「仕組み化」をまさに実践できた事例だったのではないかと思います。

伊藤

後藤さんの言う通り、全員が前向きに関わってくれたのは本当にありがたかったです。この3人以外の社員も含めて、日頃から入社者に対して「もっとできることはないか?」と考えている人が多いので、非常に進めやすかったですね。

杉浦

カオナビには同僚に興味を持っている人が多いですよね。後藤さんが研修の見直しに関心があるようだと伊藤さんから聞けたことも、今回の取り組みのきっかけの一つです。誰かの話したことが情報として組織に循環していると、共通の問題点についてお互いに話をしやすく、新しい取り組みも気持ちよく進められるのではないかと思います。

カオナビのバリューやカルチャーが発揮された取り組みだと感じました。アカウント本部の研修に対して、今後さらに挑戦したいことはありますか?

伊藤

セールスを強化するために必要な研修のベースがようやく整ったので、今後は入社者のバックグラウンドごとにカスタムしたプログラムもつくっていきたいです。過去に経験した職種や業界に合わせた研修を準備できれば、さらにそれぞれの強みや個性を発揮してもらえるはずです。

後藤

現在の研修体制にマイナーチェンジを加えれば可能ですね。さらには個人がカオナビでの経験で身に着けたいスキルを踏まえた内容にできるように、私も引き続き協力していきたいです。

杉浦

今2人が言ってくれたように、カオナビの理念に基づく、よりカオナビらしい仕組みをつくっていけたらいいなと思います。今後も現場と人事で適切に役割分担をしながら、協力しあって進めていけたら嬉しいですね。

カオナビの採用情報を知りたい方は

編集後記

なぜオンボーディングや研修を見直す自発的な動きが生まれるのだろう? という疑問を持ちながら話を聞いていったのですが、自社の話ながら、「社員の育成にこれほど熱心なスタートアップの人事組織も珍しいよな」と思うに至りました。また、入社後の活躍に拘る姿からは、タレントマネジメントを実践しようとする姿勢を感じました。

彼らの熱量の源泉の一つは、本人たちも言っていた通り、一人ひとりがオーナーシップを持って取り組んでいること。業務の中で感じた疑問をそのままにせず、自分たちで責任を持って解消していこうとする姿勢がなければ、実効性のあるオンボーディングや研修はつくれなかったでしょう。

そして、実際に見直しを進める上で効果を発揮したのが、カオナビのバリュー。手当たり次第に着手するのではなく、課題を丁寧に洗い出し、合理的なプロセスを踏んできた話から、特に「仕組み化」の思考が定着している様子が伺えました。これなら引き続き、様々な業界から優秀な人材を迎え入れることができるなと、頼もしく感じました。

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