カオナビには、仕事以外の経験を通じた自己研鑽を応援する制度があります。
営業領域で部長、本部長を務めてきた藤井俊介さんは、その制度を活用し、カオナビの業務と並行して起業し、スタートアップ企業の取締役という一面も。2023年4月からは業務委託としてカオナビに参画していた藤井さんに、“二足の草鞋”という働き方と起業への挑戦、理想のキャリアの積み上げ方について聞きました。
「起業しながら働いてみては?」が転機に。組織で働きノウハウを得る。
はじめに、カオナビ入社前のご経歴とカオナビに入社された理由を教えてください。
大手銀行に2年、リクルートに約15年在籍して、2021年7月にカオナビに入社しました。前職を辞めた2020年の段階で当時の同僚と起業を考えていましたが、共通の知人から佐藤さん(カオナビ代表取締役社長 Co-CEO)を紹介してもらう機会があり、それが大きな転機になりました。
佐藤さんも柳橋さん(代表取締役 Co-CEO)とカオナビを共同創業した経緯があり、話してみるとお互い共通点がたくさんあったんですよね。すると佐藤さんから「起業はした方がいい。でも初めは給与面など安定的な基盤があった方が安心なので、起業しながらうちで働いてみては?」という提案をもらったんです。

藤井 俊介
新卒でメガバンクに入行後、株式会社リクルートキャリア(現リクルート)に営業職として転職。営業マネージャー、部長を経験し、2021年7月にカオナビに入社。営業戦略部長、本部長を務めた後、2023年4月からは半年間業務委託として参画する。また、2021年2月にsincereed(シンシアード)株式会社を共同創業し、取締役副社長として転職・採用支援サービス部門・管理部門の責任者を務める。
当時カオナビはマネジメント人材が不足していて、副社長だった佐藤さんが営業責任者を兼務していました。佐藤さんの下にはマネージャー候補が数名いたものの全員若く、マネジメント体制もこれから整備していくという状態でした。
私はリクルートで営業部門のマネージャーや部長を10年以上経験してきたため、営業組織の構築や育成はまさに得意分野でした。佐藤さんからも「資金調達や採用など、起業後の経験やノウハウは伝えられるし、お互いがWin-Winの関係になれる」と後押ししてくれ、あれよあれよと入社の話がまとまりました(笑)
カオナビでは、会社と従業員はお互いに選び選ばれる「相互選択関係」が大切だと提唱していますが、まさにそんな関係が生まれた瞬間でしたね。カオナビをゼロから立ち上げ、上場企業に成長させた創業者二人の近くで経営を学びたいと思い、“二足の草鞋”のキャリアが始まりました。
「いずれ離れる」を前提に、ここにいる意味を考え続けた2年間
藤井さんは約2年カオナビに在籍していらっしゃいましたが、振り返って今思うことは?
あっという間でしたけど、「貢献しなきゃ」という意識は常に持っていました。
貢献とは具体的にどういうことですか?
一つは営業本部長としてサステナブルな営業組織を明確に構築して、人の異動含めた会社としての投資余地を作れる状態にすること。もう一つは、いずれカオナビを離れることを前提に「2年」というリミットを設定することでした。もっと長くカオナビに在籍する選択肢もあったかもしれませんが、それって自分の会社が成長できてないのと等しいですからね。
約2年経った結果、私が入社時にマネージャーだった後藤が本部長になり、当時のマネージャー候補がマネージャーや部長を勤めているので、ある程度貢献できた手応えは感じています。
カオナビでの2年間を振り返って、大変だったことは何ですか?
一番は、組織づくりです。普通はまず「部長の仕事はこれ」「マネージャーの役割はこれ」というように、役職と職務範囲を決めて適任者を割り振っていくのが一般的です。ただ、当時のマネージャー候補は世間一般の部長世代に比べてまだまだ若く、一般的な職務を負わせるとズレが生じる恐れがありました。そのため、「この人だったらどんなマネージャーの仕事をすべきだろう?」とまず“人ありき”で考えるようにしました。
その結果、例えば、「カオナビのマネージャーはプレイングマネージャーである」と定めました。マネージャーは管理業務がメインになるケースもありますが、カオナビでは、誰よりも顧客を理解して関係性を構築できる役回りになってもらいたい。社内でも、部下からの相談や質問に答えられるよう、誰よりもプロダクトを理解し、プロダクト組織にフィードバックしていってほしい。なので、今のマネージャー陣は顧客先に訪問するし、最新機能も常にキャッチアップする。そういった形で理想のマネジメント像を具現化していきました。そこは私自身がSaaSの営業組織を経験するのも、結構大変でしたね。
ただ、カオナビって結構いい採用をしているんですよ!(笑)彼らのポテンシャルが高かったおかげで、いい組織に成長したと思いますし、彼らの努力の賜物だと思います、本当に。

ご自身の中で変化や成長を感じられたことはありますか?
私の場合、やはり佐藤さんや柳橋さんの側で「起業とは何か」「経営とは何か」を学べたのは得難い経験です。経営者ってサラリーマンとは違う責任の重さがあるんですよね。例えば、売上を失うことによって、自分だけじゃなく従業員やその家族まで影響が及ぶ。
佐藤さんを見ていると、経営者だからといって決して現場をおろそかにしないし、誰よりも事業のことを常に理解しているんですよ。彼は10年以上カオナビを経営していますが、今でも経営会議では一つひとつの数字や結果にこだわるし、うまくいかないときにはどうしたら改善できるのか、反対に成功したときの要因は何で、どうしたら再現できるのかに徹底的に向き合う。柳橋さんも代表を務めながらプロジェクト改善にも携わっている。経営者としての価値観、姿勢はすごく変わりましたね。
スキル面では、私は元々金融や人材業界にいたので、カオナビのようなプロダクトビジネスに関わるのは初めてでした。ただ、起業した会社はまさにプロダクトビジネス事業を展開しているので、組織の作り方はすごく勉強になりました。今はまさにカオナビで学んだノウハウを活かして組織を大きくしようとしているところです。
経営者の仕事を間近で学び、ご自身のビジネスにも生かすことができたのはカオナビに入ったからこその経験ですね。
佐藤さんも柳橋さんも、普段の会話の中で、「この順番でこういう人を採用してきた」とか「このタイミングでベンチャーキャピタルから出資を受けた」とか、創業からの体験談をよく話してくれるんです。「あの時こうしとけばよかった」みたいな振り返りや反省も含めて率直に教えてくれたのは大きな財産ですね。二人には足を向けて寝られないです(笑)。
ベンチャーに転職するより、ゼロから会社を創り上げたいと起業
今年4月から業務委託としてカオナビに関わっていらっしゃいます。社内ではどのようなお仕事に携わっていますか?
4月から営業組織であるアカウント本部が新体制になり、本部付で組織が安定軌道に乗るまでをサポートしています。具体的には、本部長として最終面接では何をすべきかを教えたり、採用計画の作り方をレクチャーしたり。
藤井さんが起業された会社とご自身の役割を教えてください。
転職・採用支援サービスとHRテクノロジーソフトウェア開発を展開していて、私は取締役副社長として人材紹介業と管理部門の責任者を務めています。今は人材紹介のエージェントとして動きながら、経理や人事総務、法務を全部担当している形です。社員は現在15人ほどで、まさに今採用を進めているところです。
経営者側になって、改めて「カオナビってすごく柔軟な会社だな」と実感します。最近では出社とリモートのハイブリッドや原則出社に戻す会社もありますが、勤務する場所や時間を自分で設定できるカオナビには「プロフェッショナルとして価値貢献する人に対しては会社も報いる」というカルチャーが根付いていますね。「会社と個人は対等な関係であれ」という哲学はカオナビで学んだことの一つです。

そもそも、藤井さんが起業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
リクルートには15年在籍して、ふと「15年って一つの区切りだな」とキャリアを考えるようになったのがきっかけで。最初は起業よりも「辞める」が先にありました。ずっと大企業にいたので、次はベンチャー企業に転職するんだろうと思っていたんですけどね。
実は、一緒に起業した同僚も当時はリクルートの部長でした。彼も会社を辞めると聞いたので「次何するの?」と尋ねたら「起業を考えている」と。話をするうちに共同創業するという話になったのですが、それまで人生で一度も起業を考えたことはなかったので人生不思議なものです。「ベンチャーに転職するなら、ゼロからベンチャーを作るのは面白そうだ」と思うようになったというところでしょうか。
彼は事業企画やプロダクトマネージャー、新規事業責任者としてキャリアを積んできました。自分の強みは営業領域で、銀行出身なのでコーポレート部門も勉強しながらできるかもしれない。「二人がタッグを組んだらうまくいきそうだ」と思ったのが起業の背景です。ただ、共同経営ってうまくいかないケースが多いと聞いたこともあって。でも、私も彼も創業するからには必ず会社を大きくさせたい。だから佐藤さんと柳橋さんに学ぼうとカオナビに入社しました。
理想のキャリアは自分の“Can”を増やして勝ち取るもの
藤井さんのように自分で理想の働き方を作り出し、キャリアを作っていくには何が必要でしょうか。
キャリアプランの構築には「Wil-Can-Must」というフレームワークがあります。自分の理想を実現するには、この中の「Can」をどれだけたくさん持っているかが大事だと思っています。
Willとは理想のキャリア・働き方や、将来やりたいこと、Canはそれを実現できる自分のスキルや経験、強みなど。Mustはそのために今やるべきことを意味します。私はCanを人生の貯金みたいなものだと思っていて、リクルート時代もよくメンバーにWillが無い時は「Canの貯金をしろ」と話していました。
理想のキャリアや働き方って、誰かから与えてもらうのではなく自分で勝ち取るものだと思うんです。私のように起業しながら本部長を務めることをカオナビが認めてくれたのも、前提に15年間のキャリアで積み重ねたCanがあったからと理解しています。
Canにはどのようなものがありますか?
積み上げてきた仕事の成果はもちろん、新しいことを勉強して得た知識やスキル、自身の成功体験を再現できるように、自分なりにフレーム化した資料などさまざまです。それよりもまずは「自分は何ができる人なのか」というように、自分のCanをきちんと棚卸して把握することが必要です。
なかには「気づいたらCanが貯まっていました」という人もいますが、明確に計画を立てた方が成長が速いです。いち早くCanを積み上げた人の方が仕事を勝ち取るチャンスが巡ってくるし、優秀な人と仕事をする機会が雪だるま式に増えていきます。その構造を正しく理解して、早くから努力できる癖がついている人は強いですよね。

藤井さんにとって、仕事への熱量はどこから湧き上がってくるのでしょうか?
仕事への熱量というより、どうせ生きていくのであれば、新しいことに挑戦して、それが成功したり会得できたりする方が面白いと思ってる感じです。生きていくうえでもそれが本当に大事だと思っています。起業もまさに今挑戦中ですが、失敗してもマイナス面って何一つないんですよね。私には起業経験というCanが一つ増えたってことだし、失敗からの学びも自分の力に変えられる。そう思っています。
「こんなキャリアの広げ方があるよ」と伝播するエバンジェリストになりたい
今、パラレルワークやキャリアの複線化、兼業が活発化しています。このような考えが広まっていることについて、藤井さんのお考えをお聞かせいただけますか。
兼業ってブームになってる側面があって、一部では兼業自体が目的化してしまっている。言葉は少し極端かもしれませんが、空いた時間を切り売りする人も少なくない気がします。
カオナビが兼業推奨している理由は、会社と従業員が”Win-Win”な相互選択関係を目指しているからです。個人の裁量や自由を認める代わりに、営業であれば目標、SEなら開発納期を守って会社に貢献し、対等な関係性になってほしいと考えています。
兼業やパラレルキャリアに関してもCanの積み上げが大事です。自分の目指すキャリアや働き方を勝ち取るなら、新しい領域にチャレンジしてCanを増やすのがいいと思います。兼業よりも本業を頑張るとか、営業だけどカスタマーサクセスの仕事を兼務するとか、別の言語の開発環境に飛び込んでみるとか。「今、自分にはどんなCanが足りてないのか?」を考えて、もっと本質的に見極めてほしいです。
最後に、カオナビと今の兼業の文脈でこれから挑戦したいことを教えてください。
新本部長への引き継ぎが完了したら、おそらく私がカオナビで直接的に貢献できることは徐々に減っていくと思います。でも、違う観点で貢献できるだろうって明確に浮かんでいるのは「カオナビのような会社と、自分みたいなキャリアの広げ方があるよ」って沢山の人に伝えていくことだと考えています。
私のような働き方を認めている企業って他になくて。改めて思うんですが、この会社って結構変わってますよね(笑)。ただ、結果的に、カオナビにとっても私にとってもいい成果が生まれて、本質的なパラレルワークになったと思います。これを私自身が「カオナビエバンジェリスト」みたいに色んな人に伝播していけば、今後チャレンジしたい人が増えるんじゃないかと期待しています。
だからこそ、カオナビを卒業した実感はあまりないんです。これからも対等な関係を築きつつ、今までお世話になったお返しをしていきたいですね。たぶん、佐藤さんや柳橋さんにはこれからも相談に乗ってもらうことも多いと思うので、役割や関係性は変わっても、お互いに伴走しながら成長していく。そんな関係性なんだと思います。
