SaaSのセールスと言うと直販型が一般的ですが、カオナビは2020年からパートナーセールス(代理店営業)にも注力しています。立ち上げから約1年、直販組織だけではリーチできない顧客の開拓を実現するなど、カオナビの市場を広げてきました。
そこで今回は、大手OA機器メーカー、SaaSベンチャー企業でエンタープライズセールスの経験を積み、カオナビではパートナーセールスチームの立ち上げに参画した高岡森生を取材。
パートナーセールスならではの魅力と、0からチームを立ち上げるために取り組んだことについて、話を聞きました。
成功事例が少ないからこそやりがいある、パートナーセールスという仕事
高岡さんが現在マネジャーを勤められているパートナーセールスチームとは、どんなお仕事に携わられている部署なのでしょうか?
いわゆる代理店営業のチームで、販売パートナー様や紹介パートナー様を通じて『カオナビ』の認知度を上げ、直販営業だけではリーチできない顧客ニーズを開拓し、売り上げに貢献していくことをミッションとしています。2020年4月に立ち上がり、ちょうど1年ほど経ったところですね。
新たな販売パートナー様にアプローチし、セールスの面を広げていくことはもちろん、パートナーの皆様により効果的に営業してもらうための研修や勉強会を行うこともしばしば。また、いわゆる販売代理店様だけでなく、社労士や税理士と言った方々とアライアンスを組み、組織マネジメントに課題感がある企業様をご紹介いただくこともありますね。
アカウント本部
パートナーセールスグループ
高岡 森生新卒で大手OA機器メーカーに入社し、直販・パートナーセールスを経験。その後、Salesforce社のパートナー企業にて、エンタープライズ領域のセールス・パートナーセールスに従事。2019年にカオナビ入社。フィールドセールスとしてエンタープライズ企業を担当し、現在はパートナーグループのマネジメントを担当。
SaaSのセールスと言うと直販のイメージが強いのですが、代理店経由で営業することのメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
カオナビでは「The Model(ザ・モデル)」という、SaaS企業では一般的なセールス手法を採用しているのですが、これはどちらかというとインバウンド主体のセールス。企業様からお問い合わせをいただくことで契約につながります。
一方で、たとえば地方の企業様など、課題はあるけどインターネットで調べる文化がなく、カオナビがアプローチできないお客様は一定数いらっしゃいます。そしてそうしたお客様は、昔から付き合いのある会社設備や備品を卸す販売代理店さんとはつながっていたりするんですよね。
そういった代理店さんと我々との間に関係性が構築できれば、『カオナビ』で解決できそうな顧客課題を見つけた際に問い合わせいただくことが可能になります。
直販のチームだけではそういったパートナー探しにリソースを割くことが難しいので、パートナーセールス専門の組織をおくことで、パートナー制度を整備し、代理店さんと販売連携できる環境をつくりだせることは大きなメリットだと思いますね。これから『カオナビ』をさらに拡大させていく上でやっていかなければならない重要なアクションの1つだと思っています。
直販では手の届かなかった顧客層へのアプローチが、パートナーセールスによって可能になるんですね。パートナーセールスならではの難しさなどはありますか?
SaaSでパートナーセールスが成功している事例はまだ少なくて、ゼロから仮説をもって進めなければならない難しさはありますね。業界全体にも「結局直販じゃないとうまくいかない」という雰囲気がありました。ただ、そこに挑戦していかなければカオナビも次のステージにはいけないわけで。
それは、当時直販を前提として動いていた社内でも一緒でした。
関係部署とは、地道なコミュニケーションを重ねていくことでパートナーセールスを始めるための土台作りをしてきたんですが、やはりそれまでやっていなかったことをやるには少なからず抵抗感が出てきてしまうものなので、前向きに取り組んで頂けるよう社内をどうモチベートしていくかという部分には、正直言って苦労しましたね。
いまは徐々に取り組みを理解してもらえるようになり、最近では裾野を広げたもう少し幅広い取り組みとして、共催セミナーを開催したり、相互送客の仕組みを作ったりしながら、パートナーと協業した取り組みにもチャレンジしています。
たとえば3月に提供を開始した教育機関向けの新サービス『カオナビ Academy Cloud』も、教育業界に強いパートナー企業様との出会いがあって実現したプロジェクトです。
カオナビ Academy Cloud|教育機関の教職員に特化した評価項目や研修履歴といった独自テンプレートを特別価格で提供する、『カオナビ』の新サービス。働き方改革の必要性が高まっている教育機関の業務を支援するべく、16の学校法人の共同出資企業である株式会社エデュースと連携し、2021年3月にリリースされた。もともと社内では「上場企業として、社会貢献の文脈で何か新しいことにチャレンジできないか」という課題感があり、学校や教育現場に対する新たなサービスの展開を検討していたところでした。それがたまたま、僕たちがパートナーミッションとしてやろうとしていたこととマッチし、「高岡、やってみるか?」と声をかけて頂いて、プロジェクトとして動き出しました。
こういったパートナーセールスの枠組みを超えた協業プロジェクトは、大きな可能性を秘めていると思いますし、今後も進めていきたいですね。
パートナーセールスの立ち上げの際も、『カオナビ Academy Cloud』の取り組みの際も、「多くの方を巻き込み人を動かす」ことを経験されてきたと思います。どのようなことを意識しながら業務にあたられたのでしょうか?
意識していたことは2つです。1つ目は「実績を出す」こと。僕たちのチームに協力してもらうということは、現在直販にかけているリソースをパートナーセールスに割いてもらうということでもあるので、「パートナーセールス、やってみても良いかな」と思ってもらえるだけの売上数字を作ることを、最初の1年間は特に意識していました。
これは運の要素も強かったのですが入社当時にはあまり注力できていなかった既存パートナー様に力を入れてみたところ、かなりの実績を上げることができて。それをきっかけとして、当時の上長や周りのメンバーにパートナーセールスのポテンシャルを実感してもらえたことが、大きなきっかけになったのではないかと思います。
2つ目は「Giveを意識する」ことですね。まず、「相手のためを考えて、貢献できること(=Give)」からはじめています。確かに、パートナーセールスを推進するために協力してくれるメンバーは部署内外に多くいます。ただ、周りのフォローや善意だけに甘んじることなく、協力してくれた社内メンバーへの「貢献」の視点は失わないように心がけています。
恥ずかしくても、言葉にして伝えることから「Give」が始まる
「Giveファースト」って大事なことだとは理解はしていても、実際に何をすればいいのかわからない人も多いと思います。高岡さんは具体的にどんな「Give」をしているんですか?
小さなことかもしれませんが、たとえば何か質問が来た時に可能な限り早く返信するというのもそうですし、大勢の人が集まるオンラインミーティングで、積極的にリアクションをするのも1つのGiveだと思うんですよね。ミーティングを進行する側の視点に立つと、話が聞こえているのか、理解してもらえているのかわからないのは不安だと思うので。できうる限りミュートを解除して発言することに加えて、チャットでも発言する、最低でも「リアクション」機能で反応が相手に見えるようにすることなどは意識してやっています。まあ、僕の「黙っていられない」性格もあると思うんですけど(笑)。
やっぱり立場が変わればそれぞれの正義や考え方が出てくると思うので、正解かどうかはわからないにしても、相手の気持ちを推測した上でコミュニケーションを取るのは大事なことだと思います。そうすることで、お互いに気持ちよく過ごすことができますしね。
あとは、相手に気持ちよく自分とコミュニケーションしてもらうための礼儀として、些細なことでも「ありがとう」と「ごめんなさい」を言うことは、普段から意識的に行っています。
日常の小さなコミュニケーションの積み重ねが、「Give」につながっていくわけですね。
仲が良くなると、ついつい「言わなくてもいいかな」ってなってしまいがちだと思うんですけど、僕はちゃんと言葉にして伝えることが大事だと思っています。
たとえば夫婦関係においても、洗い物をしてもらったら「ありがとう」と伝えるとか。そうやってお互いに伝え続けることで、関係性が良くなったり深まっていったりする部分ってあると思うので、仕事に限らず生きていく上でのコミュニケーションにおいて僕が大事にしている価値観ですね。
とはいえ学生時代までは、そうやって挨拶したり「ありがとう」と言うことに対してなんとなく「恥ずかしい」という気持ちもあって、ちゃんと言えるようになったのは大学生くらいからなんですけどね。
学生時代にその意識が変わるきっかけがあったのですか?
大学時代に所属していたダンス部で部長をやる機会があったんです。当時は今ほどコミュニケーションについて意識していなくて、メンバーに運営に関する仕事を依頼する時にも「これよろしくー」とただ業務を伝えるだけで終わっていました。
自分としてはさまざまな部長の業務がある中で良くやっていた方だと思っていたし、3年間も一緒にいるんだから、あえて言葉にしなくても感謝の気持ちは伝わってると思っていたんです。
そうして部長をやりはじめて半年ぐらい経ったある日、「◯◯の家でみんなで鍋をやるから来なよ」と言われて行ってみると、なんだか空気感がおかしいんです。どうやら、和やかに男女で一緒に鍋を食べられる空気ではない(笑)。そして「ちょっと話がある」と言われ、「業務の依頼方法が投げやりだ」「もう少し気を遣って欲しい、感謝して欲しい」など、それまでの部長としての僕のコミュニケーションに対する不満を一通り、2時間ほどかけて伝えられました。
僕は意図してそうしたコミュニケーションを取っていたわけではないし、メンバーへの感謝の気持ちも伝わっているだろうと思っていたので、その時初めて、「考えや思いを口にしなければ、相手に伝わらない」ということを痛感しましたね。自分の中でコミュニケーションに対する考え方が大きく変わった瞬間でした。
「営業職」はどこの会社でもしんどい。だったら、コミュニケーションだけでも「ハッピー」に
コミュニケーションに気を遣ったり、「Giveを意識する」ことって、自分に余裕がないと難しいことのような気もします。特に営業は数字を追わなければいけない以上、ピリピリするような場面もあるかと思うのですが、そうした仕事のプレッシャーがある中でも余裕は持てるものでしょうか?
たしかに「数字が足りない」となるとどうしてもピリピリした雰囲気にはなりますし、一定の緊張感も必要だとは思います。
ただ、一年中ピリピリしてる必要はないですよね(笑)。高い目標を追うプレッシャーのある仕事をしなければならないからこそ、眉間に皺を寄せて過ごすのではなく、コミュニケーションだけでもハッピーである時間が長い方が良い。同じ10件の営業先を回ってほしいとしても、「10件回ってこいよ」と言うのか、「今日も10件、回っちゃおうぜ〜い!!」と言うのかで、だいぶ印象って変わると思うんです。メンバーもみんなプロフェッショナルな意識を持って仕事しているので、あえてこちらからピリついた雰囲気を作らなくても、目標の数字は自分で追いかけますからね。
あとは、30代にもなっていつもピリピリしているおじさんってちょっとダサいというか、どんなに忙しくても後輩に話しかけられたら手を止めて、「いいよ」と耳を貸せるくらい余裕がある方が素敵だなという感覚もあって。意識して余裕をもちたい、そんなかっこいいおじさんになりたいなと思っています(笑)。
個性を尊重するカルチャーがカオナビにはある。「これがしたい!」を持って入社してほしい
高岡さんは大手メーカーで営業職をご経験されてカオナビに転職されていますが、カオナビに入社した時にはどんな印象を持ちましたか?
入社前から「ぎゅっと働いて、ぱっと帰る。」、「やるべきことはやるけど、仕事以外の人生も尊重してくれる」みたいなイメージを持っており、入社してみると確かに15時ぐらいに帰る人がいて、それはすごく自由だなと思いましたね。
ただ一方で、業務中はメンバー全員が「やるべきことはやる」というプロフェッショナルな意識を持って仕事に取り組んでいることにも驚きました。お互いがそれぞれのプライベートややりたいことを自然に尊重する文化がある分、メリハリはしっかりしていますね。
それから、良い意味でギャップに感じたのは、部門間の距離感が非常に近いことです。それまでは、どちらかというとプロダクトを作る人たちと営業が離れている会社で働いてきたので、作る人と売る人が当たり前にお互いが抱えるニーズを共有できて、さらには経営層ともすぐ話せるカオナビの環境は新鮮でしたね。
そんなカオナビには現在200名を超えるメンバーがいると思いますが、この組織を一言で表すとどんな表現になるでしょう?
やっぱり、『カオナビ』が好きな人が集まっている組織、というところはあると思います。それぞれのミッションの中でやることは違っていても、「個にフォーカスを当てる」「個性が発揮されるイキイキとした社会を実現する」というコンセプトに共感し、その世界観に魅力を感じているメンバーは多いと思います。
ただ、自分も最初からそのミッションにものすごく深く共感して入ってきたというわけではなくて。最初からその世界観に強い興味があって入社してくる人もいれば、私のように仕事をしているうちにだんだん共感度が高くなっていく人も一定いるのかもしれません。
最後に、これから「こんな人と一緒に働きたい」というものがあれば教えてください。
『カオナビ Academy Cloud』もそうですが、今は事業の基盤が整ってきて、会社がどんどん新しいことに取り組んでいくフェーズにあるので、「こういうことがやりたいんです」と自分から手を挙げてくれる自発性を持った方には、すごくチャンスのある面白い環境だと思います。
また、実際に「カオナビでこんなことを実現したい」という想いをもって入社してきた人が活躍しているな、という印象もあるので、ぜひ『カオナビ』でできることに興味をもっていただいて、「これがしたい!」をもった状態で入社して頂けたら嬉しいです。