マルチプロダクト戦略を支えるインフラ組織のチーム作りとは?組織体制の変遷と展望

Interviewee

髙橋 佳朗

新井 健

2025.2.6

人材情報を一元化したデータプラットフォームを築くため、シングルプロダクトからマルチプロダクトへと舵を切り、さらなる挑戦的成長を目指す第2創業期のカオナビ。この挑戦に伴い、社内の組織にもあらゆる変化が生まれています。なかでも特に大きく変化したのが、インフラ領域の保守管理に関わるグループです。

カオナビのインフラ組織はどのように変化し、そしてどこを目指して向かうのか。インフラ組織の立ち上げに携わるプラットフォーム本部長の髙橋 佳朗さんと、プロダクトデベロップメント本部で各プロダクトの開発支援に携わる新井 健さんに話を聞きました。

数事業化を支える全社横断的組織体制へ

お二人のご経歴と現在の所属、業務内容について教えてください

髙橋

前職はソーシャルゲームを作る会社でエンジニアをしていました。カオナビにジョインしたのは2015年のことです。当時、社員はまだ10人ほどで、エンジニアも2~3人しかいませんでした。

入社当初は「カオナビ」のアプリケーション開発に携わり、SaaSとしての体制を整える動きをしていました。そこから社内のインフラ組織を立ち上げて保守体制を作ったり、それができたら効率化や品質管理を担う組織を立ち上げてマネジメントをしたり、といった社内整備を行いました。

今在籍しているプラットフォーム本部は、ちょうど1年前くらいに立ち上げた組織です。当社は、創業からずっと「カオナビ」1本でやってきましたが、近年はマルチプロダクト戦略へと舵を切っています。複数事業を興していくための開発体制を整え、今や300人規模となった開発組織を支えるための組織として立ち上げたのが、プラットフォーム本部です。

プラットフォーム本部長
髙橋 佳朗
ITベンチャーやソーシャルゲーム運営会社でエンジニアとしてのキャリアを経て、2015年にカオナビ入社。アプリケーション開発に携わった後、インフラ組織の立ち上げやマネジメントに従事する。2023年7月よりプラットフォーム本部長に就任。

新井

私も前職、前々職とソーシャルゲームの開発をしていて、主にバックエンドエンジニアとして働いていました。その中でAWSのところも部分的に携わっていて、それが縁で今の仕事に就いています。

カオナビには2020年にジョインして、最初はインフラエンジニアとしてSRE活動をしていました。古いアーキテクチャを刷新したり、「カオナビ」のサブシステムの開発支援をしたり、といったところに3年ほど携わってきました。

昨年からプロダクトディベロップメント本部に移り、その中のインフラグループとして開発支援に特化した業務を行っています。

髙橋

ざっくり言うと、新井さんが「カオナビ」事業のインフラを見ていて、私は全事業の開発全体におけるインフラや開発環境を横断的に見ています。

そもそも、これまでのインフラ組織はどのような体制だったのですか?

髙橋

今の体制になるまで、インフラ組織は1つのチームでした。「カオナビ」事業はもちろん、それに加えてオウンドメディアやコーポレートサイト、プロジェクト管理ツールなどの社内システムに関するインフラ部分もそのチームで見ていました。要するに、社内のインフラの大半を1つのチームが賄っていたんです。

当時のインフラチームは10人くらいで、それ以外のエンジニアが250~300人ほどいました。この少ない体制の中でさまざまなチームの要件を聞き、プロダクト以外のところも面倒を見て、となってくるとさすがに責任を負いきれませんし、考え方にもバラつきが生じるようになってきました。

そこでインフラ部門の役割を切り分けるために立ち上げたのが、プラットフォーム本部とプロダクトデベロップメント本部です。どちらも保守領域を担うのは同じですが、全社横断的な管理を行うのがプラットフォーム本部、「カオナビ」事業にコミットするのがプロダクトデベロップメント本部、という形で分かれています。

1チームでインフラ領域を賄っていたところから、複数チームで役割分担を行う形になったのですね。なぜそのような切り分けを行ったのですか?

髙橋

当社では今、マルチプロダクトを推進する経営方針のもと、新規事業が複数生まれています。その新規事業チームの中で保守領域の管理まで賄えたら、よりスピーディーに開発と連動してインフラを動かせるので理想的だと思います。ただ、事業の立ち上げフェーズでインフラ組織まできちんと確立するのは、予算の面から見ても難しいのが現実です。

だからこそ、事業にコミットしてサポートする部署が必要だったのです。そういった背景もあって、全社横断的なチームと事業支援的なチームで切り分けを行いました。

“自治・統制・効率”のバランスを高い水準で維持するチーム作り

今のプラットフォーム本部の人数規模と役割分担について教えてください。

髙橋

現在は業務委託の方も合わせて20名ほどいます。プラットフォーム本部はソフトウェアサービスグループという部門と、ネットワークインフラグループという2つの部門があります。

前者は開発組織の中の業務改善が主軸となるグループです。社内ツールの整備を行ったり、業務効率化になるようなツールを積極的に取り入れたりもしています。それがソフトウェアサービスグループです。

もう1つ、ネットワークインフラグループはプロダクト開発で必要となるインフラ領域の中でも、アカウントやネットワークなど根底となる基盤の管理を中心に担当するグループです。各事業チームが自ら判断して動けるように、しっかりと保守管理を行います。

ただ、自治を認めると統制が難しくなってくるんですよね。それぞれのチームが好き勝手にやると、収拾がつかなくなります。マルチプロダクトを推進するにあたって、それぞれで自治を認めて開発しやすい環境を作りつつも、全体としては統制を図る、そのバランスを取る必要があると思っています。

特にセキュリティ関係のところについては「ここだけはこういうポリシーを守ろう」と明確に定めた上で、あとは好きにやってくださいというスタンスを取っています。自治と統制のバランスを取るのが、ネットワークインフラグループの役割です。

組織体制が変わったことで、チームでの動き方や仕事の進め方に変化はありましたか?

新井

プラットフォーム本部の中にネットワークインフラグループという組織が生まれたことによって、今までだと1から100まですべて自分たちで賄っていた部分を、ある程度任せられるようになりました。その分、私たちプロダクトデベロップメント本部のインフラグループはプロダクト開発の支援に特化できて、非常にやりやすくなったなと感じています。

プロダクトデベロップメント本部 技術基盤部
インフラグループ
新井 健
ソーシャルゲーム運営会社などで主にバックエンドエンジニアとしてアプリ開発やAWS運用などを経験し、2020年にカオナビ入社。以降はインフラエンジニアとして開発支援に従事し、2023年よりプロダクトデベロップメント本部へ異動。

チーム作りにおいて、髙橋さんが大切にされていることはありますか?

髙橋

自治・統制・効率、この3つのワードはよく口に出しています。少し抽象的ではありますが、この3つを高い水準でバランスを取って、維持することを最も大切にしています。

各事業チームでやりたいことがそれぞれある中で、横断部門がそのすべてに応えきるのは、正直かなり難しいです。各事業の詳細まで知らないと芯を食った意見や提案は出てきませんから、本来なら各事業に特化した組織がインフラを担当するのが理想なんですよね。

ただ、事業立ち上げの段階ではリソースも足りていませんし、最初からそこまで完璧なチームを作ることはできません。だからこそ、インフラ組織では横断的な保守管理を主軸に置きながら、新規事業の立ち上げをしっかり支援する体制を強化していきたいと思っています。

組織体制が変わったことで、仕事の取り組み方など変化したことがあれば教えてください。

髙橋

以前のインフラグループでは幅広くインフラ領域を担っていたのですが、今は事業により近い範囲に絞ったグループに分割しています。全社的な範囲から事業に近いところへ限定することで、プロダクトにより集中することができるようになったのは、良い変化なのではないでしょうか。

これだけたくさんのプロダクトがあってさまざまな開発環境があると、利用するシステムやツールも多いですし、やはりメンテナンスの手が回らない部分は多々あります。そこを横断部門が自分ごととして捉えて、環境改善や効率化に積極的に取り組めるようになったのは、明確に効果が出ている部分だと思います。

新井さんは、開発支援業務を行う中でどのようなことを心がけていますか?

新井

プロダクト支援にフォーカスするようになってきましたので、「どうすればプロダクト最適化のためになるのか?」「インフラエンジニアとアプリケーションエンジニアが相互に理解・合意した状態で進めていくためには?」といったことを意識しています。

それぞれ「こうあるべきだ」という理想像を持っているので、完全に考えが一致しない部分は少なからず出てくるんですよね。それでもセキュリティ面をはじめ、最低限保証しなくてはならない部分もあります。だからこそ、お互いにしっかりと納得した上でプロダクト開発を進めていく必要があると思っています。

インフラエンジニアとアプリケーションエンジニアの理想像は、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?

新井

私の肌感での話になりますが、アプリケーションエンジニアはなるべく自分たちの開発したサービスを早く届けたいと思っている節があります。プロダクトに一番近い立ち位置にいるからこそ、そういう考え方になるのだと思います。

反対に、インフラエンジニアはセキュリティ面や費用面のことが念頭にあります。そうすると開発スケジュールがどんどん膨らんでいって、結果的にサービスの提供が後ろ倒しになってしまうことがあるんです。そういった面も含めて、お互いがある程度納得できるポイントを探し出して、調整する必要があると感じています。

“カオナビのプラットフォームサービス群”という世界観を描くインフラ組織へ

カオナビ社のインフラ組織における特徴や強みは何だと思われますか?

髙橋

当社のインフラ組織は事業のインフラ、開発組織のインフラ、全社領域のコーポレートエンジニア、といった形で3段構成になっているのが特徴です。

全社にいろいろと波及させていく取り組みはもちろん大変ですし、開発組織のところはある程度事業について理解していないと意見や提案が難しい面があります。1つのチームで賄うのではなく分割することで、よりスピーディーに意思決定できるようになったのは、1つの強みだと思います。

それから、世の中の変化とともにインフラのスタンダードが変わっていく中でも、時代に合わせてちゃんとインフラを刷新できているところも強みと言えるかもしれません。

新井

プロダクト開発を進めるにあたって、トップダウンではなくエンジニア主導のボトムアップでサイクルを回せているのは、当社の組織の良いところだと感じます。

今後マルチプロダクト戦略を推進していくうえで、カオナビのインフラ組織はどういった方向を目指していくのでしょうか?

新井

アプリケーションの開発支援に注力する方向で動いていく、というのはもちろんありますが、今後マルチプロダクト戦略が進み新しい事業が増えていくと、「カオナビ」以外のシステムに関与する場面も増えていきます。今後はそういったところでインフラエンジニア自身が課題解決力を発揮して、プロダクト内システムに貢献していく形が望ましいのではないかと思います。

髙橋

インフラ組織は役割を切り分けて複数のチームになったわけですが、役割を分けたら分けたで今度は組織間のすきまが生まれて、コミュニケーション上の課題が出てきてしまうことも考えられます。当然ながら、そこが色濃くなるのは本意ではありません。

プロダクトの中におけるインフラエンジニアとアプリケーションエンジニアとの連携ももちろん大切ですが、横断部門と事業部門においても連携を密にしていかないと、コミュニケーション課題は避けられないでしょう。

また、現時点では当社のプロダクトはそれぞれ独立していますが、今後サービス群として繋がっていくというビジョンを描いています。今後は各プロダクト間の連携を進めて、“カオナビのプラットフォームサービス群”という世界観を描いていくことになります。

その中でセキュリティ水準やサービス運用水準を一定の高さで維持して、カオナビブランドを守っていくためには、横断部門と事業部門との連携が重要です。そのためにも、セクション間の関係性を強めていけるように、というのは常に意識しながら運用していきたいと思っています。

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