エンジニアの可能性を最大化する—カオナビが仕掛けるEM主導の組織改革

Interviewee

高橋 邦彦

吉田 駿

2025.7.7

カオナビでは2025年4月より、エンジニア一人ひとりのキャリア形成を長期的に支援する役割として、「エンジニアリングマネージャー(以下、EM)」という職位を正式に設けました。これまでもEMという役割自体は存在していましたが、新たなメンバーの就任を機に、公式な職位として制度化された形です。

EMは、エンジニアの成長を後押しし、組織全体をよりよい方向へ導く重要なポジションです。そんなEMが、カオナビのエンジニア組織にどのような変化をもたらすのか。

今回は、4月にEMに就任した3名に、エンジニアの成長を支える組織づくりについて話を聞きました。

個の力で組織を強化。EM主導で始動する成長文化づくり

まずは、所属部署とこれまでのご経歴について教えてください。

高橋

技術基盤部で部長とEMを務めています。メーカーでのエンジニア経験から始まり、その後Web制作会社での受託開発を経て、2023年10月にカオナビに入社しました。2024年11月に部長職に任命され、2025年4月からはEMと兼務しています。

吉田

サービスデザイン部でEMを務めています。もともとはIT業界以外の分野で働いていましたが、その後エンジニアに転身し、SIerで受託開発を経験した後、2024年4月にカオナビに入社しました。バックエンドリーダー、マネージャーを担当したあと、今年からEMとしてチームの成長を支援しています。

プロダクトデベロップメント本部 サービスデザイン部
EM
吉田駿
非IT企業を経て、IT業界へ転身。SIer企業にてWebエンジニアとして受託開発に従事した後、2024年4月に株式会社カオナビへバックエンドエンジニアとして入社。現在は、アジャイル開発チームの専任のエンジニアリングマネージャーを担当している。

おふたりは4月にEMに任命されたとのことですが、どのような役割を担っているのでしょうか。

吉田

EMの一般的な役割としては、プロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメント、テクノロジーマネジメント、ピープルマネジメントという4つの領域があります。カオナビでは、この中でも特にピープルマネジメント、つまりエンジニアの成長やキャリア支援の部分に力を入れています。

育成という観点ではテックリードも重要な役割を担っており、開発に携わりながら、チームメンバーの技術的なサポートをしていますが、EMは現場にも入りながら、キャリアパスの設計や評価の仕組みづくりを担当しています。簡単に言えば、テックリードが「どう技術的に成長するか」をサポートするのに対して、EMは「どんなエンジニアになりたいか」という長期的な視点でメンバーの成長を支援します。

新設された背景にはどのような理由があったのでしょうか。

吉田

カオナビのエンジニア組織には、一つの機能に特化して開発する専門チームが多く存在しています。その結果、各チームが自分たちの領域だけに閉じこもってしまう、いわゆる「サイロ化」に近い状況が生まれていたんです。

私たちが目指したいのは、メンバーが他チームの仕事にも興味を持ち、部門を越えた連携ができたり、新しいポジションに挑戦できたりする柔軟な組織体制です。そのためには、一人ひとりのスキルや経験を理解し、会社全体の方向性も踏まえた上で育成にあたれる存在が必要でした。

高橋

目指したい組織のあり方に加えて、現実的な問題もありました。実はEMという役割自体は以前からあったものの、公式な職位ではなく、組織内での位置付けが不明確だったんです。それに、担当者も一人だけという状況でした。少人数の頃はそれでも何とか対応できましたが、組織が成長するにつれて限界が見えてきました。

一人に依存した属人的な体制では組織の成長は望めません。同じような考え方や能力を持った人材を育て、共感の輪を広げていくことが不可欠です。この考えから、EMという役割を正式に設置し、複数名体制にしたんです。

プロダクトデベロップメント本部 技術基盤部
部長兼EM
高橋邦彦
メーカーでのシステム開発からキャリアを始め、長らくWeb制作会社で受託開発に携わった後、2023年10月に株式会社カオナビに入社。プロダクト横断のプロジェクトに従事している。福岡で愛犬と暮らしつつ、フルリモートで仕事を行っている。

EMは現在何名いらっしゃるのでしょうか。

高橋

4名います。うち2名は部長を兼務し、あとの2名は専任EMとして活動しています。

お二人がEMになられた経緯を教えていただけますか?

高橋

当時唯一のEMだった方から相談を受けたのがきっかけです。約1年間、組織に必要な役割について話し合っていた結果、自然とEMを担うこととなりました。

吉田

私の場合は日々の業務の中で、チームや部としての特色が薄れていることに危機感を抱いていたんです。このままでは各エンジニア、ひいては組織全体の力が低下してしまうのではないかと考えていました。

そんな時に、部長から次年度の目標について伺い、EMポジションを新設して組織強化を目指す計画があることを知りました。その内容が私自身の問題意識と合致していたので、自分なりに考えをまとめて、「こういう形で進めていけば効果的ではないか」と提案をしてみたんです。すると、その熱意が評価され、EM経験はなかったものの任命していただきました。

高橋

EMになったメンバーに共通しているのは、「組織としてこうあるべきだ」「こういう方向に進むべきだ」といったビジョンを持っている点ですね。組織づくりに対する熱意や考えを持った人たちが集まった結果、今のメンバー構成になったと思います。

一人ひとりのキャリアの道筋を立てるべく、部ごとに土台作り

チームや部の特色というお話がありましたが、所属部署の特徴を教えてください。

吉田

私が所属するサービスデザイン部は、特定の領域に特化して開発を行っています。新しい価値を探求するべく、なかでも仮説検証に力を入れています。

部内には5〜10人程度のチームが複数あり、基本的にチームメンバーは固定で、ひとつのプロジェクトに取り組みます。チームの結束力を活かした開発スタイルが強みです。

高橋

技術基盤部は他の部署とはかなり異なる特徴を持っています。チームで動くことはあまりなく、部を横断したサポートを行っています。例えば、他部署で技術的な課題が発生した際に、一人または二人のメンバーが専門知識を活かしてサポートするといった形です。そのため、メンバー一人ひとりの自走力が大事で、さまざまな要望に対応できる「引き出し」の多さが求められます。

また、カオナビ全体の技術的な方向性を示すという重要な役割も担っているため、常に新しい技術トレンドもキャッチアップしておく必要があります。

吉田

他にもEMが在籍している部署には、カスタマーエクスペリエンス部と研究開発部があります。それぞれ簡単にご説明すると、カスタマーエクスペリエンス部は、カオナビの機能を横断的に見ながら、主にユーザーからのフィードバックやリクエストを反映する改善業務に重点をおき、顧客体験の向上に取り組んでいます。

研究開発部は、新しい技術領域を既存プロダクトに組み込み、そこから既存プロダクト自体にも価値を生み出すことを目指しています。カオナビの次の成長を支える新しいイノベーションの創出拠点ですね。

着任からまだ4ヶ月ですが、各部署ではどのような取り組みを進めていますか。

吉田

サービスデザイン部では基盤づくりの第一段階として、まず状況把握に取り組んでいます。これまで一人のEMの方がほとんどの業務を担当していたので、全体像が見えない状況でした。そこでまずは、誰と誰が1on1をしているのか、関係性や頻度の整理に着手します。カオナビには上司以外のメンバーとも1on1をしてよいという「ななめ1on1」と呼ばれる制度があるんですが、自由度が高い反面、フォローから漏れてしまうメンバーを出さないことが不可欠でした。

サポートが不足していそうな人には新たな1on1の機会を設け、今ちょうど一人ひとりの成長の方向性を一緒に考える段階に入ったところです。

高橋

技術基盤部ではエンジニア、デザイナーなど職種が違っても、同じグレードであれば同じレベルのスキルを持ってもらえるよう、評価基準の統一化に取り組んでいます。

例えば「グレード2ならこのスキルが必要」「グレード3に上がるにはこれができるべき」といった指標を定めることで職種間の評価に不公平感が生まれないようにしたいんです。暗黙の了解だった基準を明文化することで、メンバーが目標設定をしやすくなり、成長の道筋も見えやすくなると期待しています。

こうした組織づくりの動きは他部署でも始まっており、カスタマーエクスペリエンス部では、チーム編成のあり方を再検討し、メンバーの主体性を高める取り組みに着手し始めました。研究開発部は今後提供予定の新規プロダクトのプロトタイプ作成を行う部署でもあるので、チーム組成であったり、品質保証のやり方を従来のやり方とは違ったアプローチをするなど、それぞれの役割に応じた取り組みが始まっています。

一方で、部を横断して進めている施策はありますか。

高橋

はい、いくつか施策を進めていて、そのひとつにロールの任命方法の見直しがあります。

例えば、「プロジェクトリード」というロールですが、今までは経験や実績からリーダーを選んでいました。これを推薦制にして、「チャレンジしたい」という意欲も重視する形に変えたんです。

この変更によって、これまでリード経験のなかった若手メンバーからも「挑戦したい」という声が上がり、成長の機会となっています。この施策は始まったばかりです。そのため、メンバーからフィードバックをもらいながらよりよい形にしていきたいと思っています。

個性を活かしたカオナビの成長エコシステムを目指す

EMとして活動する中で、なにか気づきや学びはありましたか。

吉田

当たり前ですが、メンバー一人ひとりの課題や成長ポイントはそれぞれ異なりますね。「これさえやれば全員が良くなる」という一律の解決策はなく、標準的な仕組みを整えつつも、一人ひとりに合わせた個別のサポートが必要だと考えています。

高橋

先ほどお話しした通り、技術基盤部のメンバーには様々な「引き出し」が求められます。幅広い技術に対応できる力をどうやって身につけてもらうか、そしてそれをちゃんと評価できる仕組みをどう作るか、日々試行錯誤しています。

あと、EMとして活動する中で感じるのは、エンジニア組織全体でメンバーの技術への情熱や組織改善への意欲が非常に高いということです。なので、「どう学ぶか」「どの方向に進むべきか」を示して、すでにある意欲を最適な方向に導くことも重要ですね。

今後、どのような組織づくりを行っていきたいですか。

高橋

メンバーの成長段階に合わせて挑戦の機会を用意し、着実にステップアップできる組織を目指したいですね。そのために、日々の業務から多くの学びが得られる環境を整えていきます。

また、現在はピープルマネジメントに注力していますが、今後はその範囲を広げて新卒メンバーのケアなどもEMが担えるようにしたいと考えています。

吉田

私としてはサービスデザイン部の独自性や特色をしっかり打ち出していきたいです。同時に、その進め方や価値観をオープンな形で組織全体に共有していくことも大切だと考えています。他のEMメンバーとも連携し、お互いの取り組みや業界のトレンドを学び合いながら、みんなが納得できる形での組織運営を実現していければと思います。

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