フロントエンド・QAエンジニアが語る、役割を超えた挑戦がもたらした個人とチームの成長

Interviewee

矢尾 魁成

赤﨑 光

2025.6.27

「エンジニアとして、さらに成長するには?」「今のスキルセットから、もう少し自分の幅を広げたい」——。特定領域での経験を何年か積み、専門性が確立されてきたタイミングで、今後のキャリアについてこのように考える人は多いのではないでしょうか。

カオナビでフロントエンドエンジニアを務める矢尾と、QAエンジニアの赤﨑も同じ思いを抱いていました。そんな彼らの成長意欲は、「社内留学」や「職種を超えた協働」といった挑戦へとつながっていきます。

なぜ、そうした挑戦が実現できたのか。本記事では、挑戦を後押しするカオナビの組織環境を紐解きながら、職種の枠組みを超えた2人の体験談から、カオナビならではの成長環境に迫ります。

職種の枠組みを超え、チーム全体で開発に取り組む

それぞれの担当業務と、カオナビに入社された経緯を聞かせてください。

矢尾

私は「カオナビ」上の分析機能の一つを開発するトキチームに所属し、フロントエンドの開発を中心に担当しています。また、プロジェクトをリードする立場でもあります。

前職ではWeb制作に携わっていたのですが、次第に「アプリケーションの開発をしてみたい」と考えるようになり、自分自身がユーザーでもあったカオナビに興味を持ちました。

入社の決め手は、面接で当時はCTO室に所属していたテックリードと会い、技術力や人柄に惹かれてに惹かれ「この人と一緒に働きたい」と思ったことです。フレックスやフルリモートなど、働き方が柔軟な点も自分にとって魅力的でしたね。

プロダクトデベロップメント本部
サービスデザイン部 Strategy1グループ
矢尾 魁成
大学卒業後,2019年にWEB制作会社に新卒エンジニアとして入社。WEBサイトの新規開発・保守運用など通じてフロントエンド領域の開発を経験。その後2022年9月に株式会社カオナビへ入社。デザインシステム改善や新規機能開発に従事している。

赤﨑

矢尾さんと同じトキチームに所属し、私はQAエンジニアを務めています。機能のリリース前にテストを実施し、改善点があればフィードバックと修正依頼を開発メンバーに伝え、お客様に安心してご利用いただける状態にすることが主な業務です。

私は前職でも、品質管理部門でテスト活動を行っていました。KPI管理がメインの仕事から、現場で手を動かす仕事に携わってみたいと考え、カオナビへの入社を決めました。そのタイミングで、地元である福岡県へUターンしたのですが、地方にいながら現場の業務にチャレンジできることが嬉しかったです。

お二人の所属するトキチームについて、その役割や特徴を詳しく教えてもらえますか?

矢尾

トキチームは、サービスデザイン部内のStrategy1グループに属しており、このグループでは、人材情報における履歴データを活用した分析機能の開発を担当しています。

その中でも、従業員数や離職率、平均勤続年数など、社員データの推移を可視化する「時系列グラフ」機能の開発を担うのが、私たちトキチームです。

「カオナビ」をご利用いただくお客様の課題を起点にミッションを設定し、機能開発を通じて価値を柔軟に届けることをチームの方針としています。

赤﨑

トキチームの大きな特徴は、職種ごとの役割にとらわれず、チーム全体で開発に取り組む体制です。「開発者はコードを書く」「QAはテストを行う」といった一般的な役割の枠組みを超えて、協働しながら業務を進めています。

例えば、ユーザーインタビューは特定のメンバーだけが担当するのではなく、チーム全員で参加しています。必要に応じてプロトタイプやベータ版などをお見せしながら、本質的なニーズを探るためのコミュニケーションを積極的に行っています。こうしたスタイルは、カオナビの中でも珍しい開発の進め方なんです。

プロダクトデベロップメント本部
サービスデザイン部 Strategy1グループ
赤﨑 光
大学卒業後,2013年にゲーム開発会社に入社。審査やテスト活動などを通じて品質管理を経験。その後2023年3月に株式会社カオナビへ入社。新規機能開発に従事している。

フロントエンドエンジニアとしてさらに成長するため、“社内留学”でバックエンド開発に挑戦

「役割にとらわれない」チーム体制とのことですが、矢尾さんは異なる領域へのチャレンジ経験もあるそうですね。ぜひ詳しく教えてください。

矢尾

2024年5月から8月の間、これまで未経験だったバックエンドの機能開発に携わりました。このチャレンジはテックリードの取り計らいで、もともとのチームに籍を残したまま、他チームへの「留学」という形で実現したんです。

テックリードからの提案だったのですね。

矢尾

そうなんです。最初に相談を持ちかけたとき、まさか他のチーム、他のプロジェクトに参加できるとは思ってもみなかったです。

入社して1年半ほど経ち、フロントエンドとしてのスキルに手応えを感じ始めていましたが、「このままでも良いけれど、次の一歩は何だろう?」とモヤモヤしていた時期でもありました。

そこでテックリードに相談すると、「バックエンドでAPIを作れるようになるといいのでは?」とアドバイスをもらいました。

自チームではなく、他のチームへ留学することになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

矢尾

当時所属していたチームでのバックエンド開発に参加する選択肢も、もちろんありました。ですが、開発中の案件がユーザーの権限によってデータの表示条件が変わるという複雑な仕様だったため、初心者には難易度が高かったんです。

そうした状況を見て、テックリードが初心者でもAPIの開発に取り組めるプロジェクトを探してくれました。いろいろと調整を進めていただき、本当に感謝しています。

留学先のチームには、自分からも目的や希望をしっかりと伝えました。その際に参考にしたのが「カオナビ」にある機能の一つで、職種ごとのスキルを可視化できる「アビリティマネージャー」です。バックエンドエンジニアの項目を参照して「このスキルを身に付けたいです」と明言することで、目指す姿についての共通認識が持てました。

3ヶ月間の留学で、どのような成果を得られましたか。

矢尾

留学期間が終わる2024年8月に、自分が開発に携わった機能をリリースできました。チームにジョインした当初は必要な知識がまったくない状態だったのですが、チームの手厚いサポートもあり、短い期間で学びを形にできて嬉しかったですね。

留学先のチームメンバーは、質問や相談にすぐ答えてくれるだけでなく、いつも「何かつまずいている部分はない?」と親身に声をかけてくれました。バックエンドエンジニアとして高いスキルを持っている人ばかりで、学びを得る環境として、本当に恵まれていたと感じます。

このチャレンジ経験が、現在の業務にどう活きていますか?

矢尾

機能を実装する前のプロトタイプを作る際、以前はAPIの部分をバックエンドエンジニアのメンバーに依頼していました。留学を経てからは、まず自分で簡易なAPIを作ってみたり、ドキュメントを書いたりもできるようになりました。チームの中で、担当領域を超えて貢献できる範囲が増えたと実感しています。

また、バックエンド開発への理解が深まったことで、APIやデータベース設計に関する議論にも参加しやすくなりました。役割が違っても、同じプロダクトや機能を作る仲間として、より垣根なくコミュニケーションが取れるようになったと思います。

「QAエンジニア=品質管理」の職能を飛び越えた、チームでの協業経験

赤﨑さんのチャレンジ経験についても教えてください。

赤﨑

私の場合、矢尾さんの社内留学とは異なり、チームでの対話の中で自然と“越境”が始まりました。

通常のフローでは、エンジニアがユニットテストや結合テストを行った後に、私たちQAエンジニアがテストを実施するという流れになっています。しかし、グラフの描画機能を開発していた際、コードの計算処理が多く、複雑な構造だったため「前段階のテストからQAエンジニアがテストに参加したほうが効率的ではないか」という話になったんです。

そこで、エンジニアメンバーから「テストコードを一緒に書いてみない?」と声をかけてもらい、前段階の工程から一緒に取り組むことになりました。バックエンドの開発はもちろん、コードを書く経験もなかったので、まったく新しい領域への挑戦でした。でも、だからこそ得られる学びが多く、チームのサポートもあって一歩を踏み出せたんです。

そのように声をかけてもらえるのは、チームの関係性が大きく影響しているのではないかと感じます。

赤﨑

そうですね。以前から「自分の担当業務だけでなく、他の役割の人たちが何を考え、どう向き合っているのか」を知ることが大事だと考え、さまざまな働きかけを行ってきた経緯があります。それが今につながっているのかもしれません。

その背景には、ある出来事があります。以前「カオナビ」の画面上に設置したテキストフィールドに長い文字列を入力すると、文字が突き抜けてしまう不具合を検知して、開発チームに修正依頼を伝えたことがあったんです。

しかし、エンジニアメンバーから返ってきたのは意外な内容でした。「ユーザーはその項目に長文を入れるケースはほぼないから、対応の優先順位は低くてもよいのでは」と。

その回答を聞いたとき、QAエンジニアも、もっと他のエンジニアメンバーが大切にする生産性やユーザー視点を取り入れなければならないと感じたんです。そこから、とくにエンジニアやPO(プロダクトオーナー)がどんなことを考え、どんな観点でプロダクトを作っているのかを知ることに意識を向けるようになりました。

具体的に、どのような働きかけをされてきたのですか?

赤﨑

まずは、開発者がメインの開発見積もりについてのミーティングに参加し、「なぜこの機能を作るのか?」「それは本当にユーザーにとって必要なのか?」を積極的に聞いていきました。

また、その上で自分の意見や懸念を率直に伝えるようにもしました。結果、まだ十分に検討できていなかった部分が明らかになり、最終的には機能開発を取りやめるという判断に至ったケースもあったんです。QAの立場から、チームの意思決定に関われたと感じ、嬉しかったですね。

赤﨑さんの視点が、チーム全体にとっても重要な気づきになったのですね。

赤﨑

以前は「その領域に詳しい人に任せたほうがいいかも」「領域外である自分の意見が本当に役立つのか」と、自分が発信することに対しての葛藤もありました。ですが、他の職種の人が見えていない観点を提供できる可能性に気づき、「もっと知ろう、関わろう」という気持ちが強くなったんです。

今のトキチームでは、こうした価値観が近いメンバーが多く、QAという職能、テストという業務範囲を超えた取り組みが自然に広がっていきました。テストコードのチャレンジも、こうした土台があったからこそ実現できたのだと思います。

チームのために貢献し、お互いを称え合う。そんな環境が、挑戦を後押ししてくれる

お二人のチャレンジに対して、周囲からはどのような反応がありましたか。

矢尾

「自分も何かに挑戦してみようと思えた」と、声をかけてもらえたことが印象に残っています。今まで経験のなかった領域に足を踏み入れるのは、多くの人にとって怖いものでもあると思います。失敗したときのリスクを考えると、なおさらですよね。私自身、そういった気持ちを抱えながら挑戦したので、自分の経験が周りにポジティブな影響を与えられたと感じ、嬉しかったです。

赤﨑

私も、ポジティブなコメントを多くもらえましたね。たとえ失敗しても、それも含めて称えてくれる環境があると感じます。さらに、今までの取り組みを、インタビューやイベントなどで社外に発信する機会をいただくことも増えました。

カオナビに入社して、自分の役割からどんどん染み出していく、貢献できる範囲を広げていく、そういった姿勢の大切さを学んでいます。

矢尾

ただ、自分の職能を超えて何かに取り組むことが、すぐ直接的な評価に結びつくわけではありません。

最初は、チームとして達成したいゴールがあり、そこから「ミッションの実現に向けて、このようなスキルを伸ばしたい」という個人の課題意識や目標も明確になります。この目標を達成するための選択肢の一つが、私たちが取り組んだような、役割にとらわれないチャレンジなんです。

個々人が力をつけた結果、チームでこだわって、いいものが提供できる。お客様に価値を届けられたことで、チームにいるみんなが評価される。このようなプロセスが前提にあると思います。

個人の成長だけが目的ではなく、チームとしての目標達成や、チームへの貢献が前提にあるということですね。

矢尾

その通りです。だからこそ、常に誰もがチームのことを気にかけ、良い関係性を構築しようと能動的な働きかけが自然にできていると感じます。私は、そんなトキチームで仕事をするのが本当に楽しくて大好きなんです。

お互いが声をかけやすいように、環境面でもちょっとした工夫をしています。たとえばSlack上のハドル機能を利用してオンライン通話をしやすい状態にしたり、定期的に雑談の機会を設けたり。雰囲気が良いと、チームへの愛着にもつながりやすいと考えています。

赤﨑

チームにいかに愛情を持てるかは、働くうえで重要ですよね。メンバー一人ひとりが個人で成長するだけではなく、「チームに対して貢献したい」と自然に思えるようになりますから。カオナビは、そういった考えをもともと持っている人が多いと感じます。

私も、感謝を伝えたり、成果や相手の良いところを褒めたりと、ささやかなコミュニケーションを大切にしています。

最後に、今後の展望を聞かせてください。

矢尾

これから取り組むプロジェクトは、非常に抽象度の高いミッションになりそうです。今は手探りで進めている部分も多いので、プロジェクトをリードする立場として、しっかりとけん引できる存在になりたいですね。

今まで以上に、お客様のリアルな声やニーズを伺いながら、より価値の高いものを提供できればと思います。

赤﨑

私は、領域を超えた取り組みを続けていきたいと思っています。今後はとくに、営業やカスタマーサクセスなど、ビジネスサイドのメンバーとも近い距離で協働していきたいですね。お客様と深い関わりを持っている部署が、どのような考えでどのように業務を行っているのかを理解することが、プロダクトの提供価値にも還元されるはずです。そのためにも、やはり「相手を知る」ところから始め、自分の貢献できる範囲を広げていきたいです。

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