新ビジョン「Talent intelligence™(タレントインテリジェンス™)」を掲げ、全社を挙げたAI活用の推進を本格化させているカオナビ。2026年現在、その最前線で「AI前提の働き方」を支え、事業の成長スピードを加速させるための基盤を構築しているのがプラットフォーム本部です。
急速な技術進化によって、エンジニアに求められる役割が「実装」から「本質的な設計」へと変化する今、プラットフォーム本部では「自由な挑戦」と「強固なセキュリティ」を高度に両立させる仕組みづくりを進めています。
今回お話を伺ったのは、そのプラットフォーム本部を率いる本部長の太田さんです。変化の激しいAI時代における開発基盤のあり方や、安全性とスピードを両立させる組織づくりの思想、そして今カオナビで働く面白さに迫ります。
セキュリティの知見を活かし、組織の成長を加速させる役割
プラットフォーム本部長に就任された経緯と、現在の役割について教えてください。
もともと私は、2024年にセキュリティ領域の担当として入社し、インフラや情報システム部門を含めた周辺領域にも携わってきました。それから約2年が経ち、前任者の退任に伴い、後任として評価していただいて、プラットフォーム本部長に就任しました。
現在のミッションは、社内インフラやセキュリティの維持をベースにしつつ、積極的に業務改善を加速させていくことです。これまでの経験を活かして、いわゆる「守り」を固めるだけでなく、組織の成長を加速させる「攻め」の施策も展開していく役割を担っています。
前職から一貫してセキュリティ領域に身を置かれていますが、これはご自身の意思で選択されたのでしょうか?
そうです。私は細かなリスクや懸念点が気になる性分で、その特性が最も活かせるのがセキュリティ領域だと考え、この道を選びました。ただ、インフラや情報システムなどの周辺領域も見る立場になったことで、これまで以上に利便性や事業とのバランスを考えています。
プラットフォーム本部長
太田 健介
SIer企業にて認証製品の開発・導入の経験を経て、暗号資産取引所にて全社セキュリティ関連業務に従事。2024年にカオナビに入社し、コーポレート、プロダクト両方の情報及びサイバーセキュリティリスク対策や他関連業務を推進する。2026年、プラットフォーム本部長に就任。
単なるツールを超えた「AI前提の働き方」を全社で推進
CTO松下さんへのインタビューでは「AI前提のSaaSのあり方」についてお話しいただきました。システム基盤を担う立場から見て、現在のカオナビでは「AI前提」の考え方はどの程度浸透していますか?
社内の意識はかなり高まってきていると思います。カオナビでは、2年ほど前からエンジニアを中心にAI活用を進めていましたが、2026年4月からは全社施策としてAI活用の推進を本格化しました。
現在では、ビジネスサイドを含む全従業員がGoogle Workspaceの機能(Gemini)をはじめとしたAIを使える環境にあります。その中でも、業務改善を牽引するメンバーには「Claude Code」や「Claude Desktop」を配布しています。
私たちが目指しているのは、単なる作業支援ツールとしての利用ではありません。「AIが一次処理を行い、人間が最終判断する」という、業務プロセスそのものの転換です。その意識は社内にも浸透しつつあると感じますね。
エンジニアだけでなく、ビジネスサイドにもAIツールを展開しているのですね。
その通りです。エンジニアサイドに限定していない理由は、大きく2つあります。1点目は、ルーティンワークや議事録作成などの自動化可能な業務をAIに肩代わりさせ、メンバーが顧客に向き合う時間を創出するためです。
2点目は、弊社が「タレントインテリジェンス™」を新ビジョンに掲げ、AIの実装に注力しているからです。これを軸に据える私たちが最前線で「AI前提の働き方」を実践し、そこで得た知見やノウハウをお客様へ還元していく。それが本来あるべき姿だと捉えています。
全社へ浸透させるうえで、難しさを感じる部分はありますか?
最も難しいのは、人の意識を変えることです。「AIで業務を少し楽にする」という発想から「業務プロセス自体をAI前提で組み替える」という発想への転換には時間がかかりますし、トップダウンの指示だけではなかなか難しいものです。
そこで現在は、各部門から「AIアンバサダー」と呼ばれる推進メンバーを選出して研修を行い、彼らを中心に業務プロセスを組み替えるアプローチを取っています。また、Slackでの自発的な活用事例の共有など、従業員同士で成功体験を共有できる環境づくりも行っています。将来的には、優れた活用事例を表彰するような仕組みも構築したいと考えています。
AIと共存することで、より本質的な価値創造のための時間が生まれる
さらなるAI活用によって創出された時間は、今後どのように使われていくのでしょうか?
これには多様な意見があり、人員削減という文脈で語られることもありますが、私はより本質的な価値創造の時間にシフトしていくだろうと考えています。
例えば営業であれば、情報収集や資料作成はAIに任せて、その分お客様への提案を磨く時間に充てられるようになります。開発でも、納期に追われて妥協するのではなく、より良いシステム設計やアーキテクチャを検討する時間を確保できます。結果としてリリーススピードが向上し、より高い顧客価値を提供できるようになるはずです。
任せられる仕事は積極的に任せ、自分は新しい価値を生み出す仕事へ進んでいく。そうしてAIと共存していけば、自分自身の成長にもつながっていくのではないでしょうか。
AIと人の役割分担が進む中で、人に求められる役割はどのように変わっていくのでしょうか?
AIが提示したアイデアをそのまま受け入れる「AIに使われる状態」ではなく、人間が主体となってさらに思考を深め、「AIを使いこなす」ことが求められると思います。
つまり、これまでマネージャー層が担っていたような俯瞰的な立ち位置を、個々の案件やプロジェクトにおいてメンバー全員が実践していく必要があるんです。試行錯誤を重ねながら全員の目線を引き上げ、より付加価値の高い業務へと移行していけたらと考えています。
マネジメントに近い素質が求められるようになると、若手にとってはハードルが高く感じられそうですね。
そういう捉え方もあると思いますが、私自身は楽観的に捉えています。確かに、今後はコーディングだけを担うエンジニアは減っていくでしょう。ただ、それはツールや手法の変化とともにエンジニアがフォーカスする領域が変わっていくだけで、若手エンジニアが活躍できなくなるわけではないと考えています。
重要になるのは、技術を理解したうえでAIを使いこなし、「何をつくるべきか」「その機能が事業やプロダクトにどのような価値をもたらすのか」を考える力です。これからのAIネイティブ世代は、実装をAIに任せることを前提に、若いうちから設計や価値判断に携わるようになるのではないでしょうか。
エンジニアに求められるものは、「コーディング」から「本質的な設計(エンジニアリング)」へと移っていくはずです。だからこそ、事業のコアな部分にまで深く関わることができる。それがこれからのエンジニアの面白さになっていくと考えています。
現状、まだAIに代替できない「人が担う役割」とはどこにあるのでしょうか?
相手の表情や言葉の裏にある懸念を汲み取り、寄り添うアプローチは、依然として人間の領域ですね。法令や判例との照合はAIのほうが得意でも、お客様が本当に実現したいことを汲み取って最適な判断を行うのは、まだ人間にしかできません。
私たちのビジネスの根幹にあるのは信頼関係です。お客様がカオナビを選んでくださるのは、プロダクトの品質だけでなく、弊社のビジョンやフロントで接するメンバーに共感し、信頼してくださっているからでもあります。
今後どれだけAIが人間に近い振る舞いを模倣できたとしても、判断の責任を取ることはできません。顧客との信頼を築き、最終的なジャッジを下すという役割は、今後も変わらず人が担う役割であり続けるのだと思います。
一方で、お客様の中には、AIに抵抗感を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのあたりはどう捉えておられますか?
もちろん、いらっしゃるだろうと考えています。AIを中心に据えるといっても、それを利用しないお客様にとって使いづらいプロダクトになってしまっては本末転倒です。「カオナビ」の強みであるUIの使いやすさを維持しながら、AIの利便性を自然に取り入れていくことが重要だと考えています。
自由と安全を両立させる、カオナビのセキュリティ設計
CTO松下さんへのインタビューでは「自由に動けるサンドボックス(実験場)のような環境がある」というお話がありました。厳格な管理が必要な人事データを扱うなかで、開発の自由度とデータ管理の両立はどのように設計されているのでしょうか?
「自由に動ける環境」といっても、何でも許可されているわけではありません。扱うデータや目的に応じて、必要なセキュリティレベルを明確に設計しています。
当然ながら、お客様の個人情報を用いて自由に実験を行うことは絶対にありません。検証にはダミーデータを使用し、お客様のデータを扱う際は、お客様から同意を得た上でセキュリティ面において十分に検証された仕組みを経た上で提供しています。安全性を担保するルールと仕組みが機能しているからこそ、フレキシブルに試行錯誤できる環境が実現しているんです。
エンジニアが自律的に動けるよう、あらかじめ仕組みやルールがデザインされているんですね。
はい、加えてガイドラインやルールを明文化し、社内へ公開しています。新しいツールが登場した際も、セキュリティ担当者の判断だけに頼るのではなく、ガイドラインに基づいて現場が判断できるようにしています。
以前、生成AIのガイドラインの更新にも携わられたと伺っています。その際はどのような点を意識されましたか?
意識した点は2つあります。1つは「過剰な規制を避けること」です。最先端の技術に対して、未知のリスクを恐れて一律に禁止することは簡単ですが、それでは新たな挑戦ができず、ビジネスの競争力も劣後してしまいます。リスクを正しく見極め、必要以上に制限しないよう心がけました。
もう1つは「常に更新し続けること」です。AIを取り巻く環境は急速に変化し続けています。現在もAIエージェントの登場など、技術の進化に合わせてガイドラインを即座に最新化し、ルールを陳腐化させない姿勢を大切にしています。
カオナビはスピード感のある組織という印象がありますが、その原動力はどこにあるのでしょうか?
「顧客価値ファースト」の考え方が全社に浸透している点が大きいと感じます。「顧客への提供価値を高めるために、現在の手法をどう改善すべきか」という問いが自然と立ち上がり、メンバーが自発的に動く風土があるんです。また、エンジニア自身が技術に対して非常に敏感で、新しいものを積極的に試そうとするベンチャー気質を持ち合わせていることも影響しているのではないでしょうか。
さらに、挑戦を支えるための仕組みとして、ガイドラインやルールを整備するとともに、AI活用を全社的に加速させるため立ち上がった「AI推進室」が中心となって新しい技術の活用を継続的に議論しています。
AIのような変化の速い領域では、明日の常識が今日とは異なることも珍しくありません。だからこそ、技術面とそのリスクも熟知しているAI推進室の責任者と密にコミュニケーションを取りながら、安全かつ迅速に先進的な挑戦を推進できるような体制を整えています。
“カオス”な変化と「仕組みづくり」を楽しめる人へ
プラットフォーム全体を整備する立場として、太田さんはどのようなエンジニアと一緒に働きたいですか?
個人の成果だけでなく、企業全体を良くするための「仕組みづくり」に関心がある方と一緒に働きたいですね。組織全体がうまく回っていく仕組みを設計し、浸透させることに面白さを感じられる人であれば、きっと活躍していただけると思います。
弊社には先進的な取り組みを歓迎する風土がありますし、メンバーは変革に積極的な人ばかりです。影響範囲の広い仕組みを構築・展開していきたいという方にとっては、存分に腕を振るえるフィールドになるのではないでしょうか。
では最後に、カオナビに興味を持ってくださっている方へのメッセージをお願いします。
私自身、入社して最初に感じたのは「本当にいい人が多い企業だ」ということでした。新しい提案に対しても最初から否定するのではなく、「どうすれば実現できるか」という前向きな姿勢で向き合ってくれる人ばかりなんです。
それと同時に、各々が自身の領域におけるスペシャリストとしての自負を持っています。専門性の高いプロフェッショナルたちが、互いに協力し合いながら企業としての価値向上を目指すプロセスは、とても刺激的で面白いものです。
とはいえ、今のカオナビは正解のない変化の真っただ中にあります。そうした“カオス”の中での試行錯誤を前向きに捉えられる方と、ぜひ一緒に新たな挑戦を楽しめたらと思っています。