カオナビの仕事には「裁量がある」「成長できる環境がある」と語られる一方で、そのリアルなプロセスを想像するのは、なかなか難しいかもしれません。
そこで今回は、HR領域未経験の状態でカオナビへの転職を決意し、周囲を巻き込みながら短期間で裁量を広げたメンバーにお話を伺います。
入社1年を待たずにほぼゼロの状態からの案件を任され「顧客より顧客を考える」「会社を使って成長する」というバリューを体現している田中さん。その舞台裏には、どのようなチャレンジがあったのでしょうか。
10年培った得意領域を手放し、未知のHR領域にPdMとしてジョイン
まず、現在担当している業務とミッションについて簡単に教えてください。
私が所属するプロダクトディレクターグループは、カオナビの価値をより多くのお客様に届けるため、新機能の企画やプロダクトの成長を牽引するチームです。
その中でも私が担当しているのは「カオナビエンゲージメント」というプロダクト。これは、従業員の企業への愛着心や貢献意欲を数値化し、組織課題を可視化するための調査の一つで、離職率の低下や生産性向上などを定量的に把握することが期待されます。
「カオナビエンゲージメント」の正式リリースは2026年9月17日でしたが、5月中旬にβ版をリリースし、順次ご利用いただいている段階です。
プロダクトデベロップメント本部
TalentHRグロース部
プロダクトディレクターグループ
田中 郁也
飲食業界×SaaS領域で10年以上キャリアを重ねる。飲食店向けSaaS(予約台帳)をOEMで扱う企業で営業・カスタマーサクセスを経験し、自社開発企業へ移りCS組織の立ち上げ・マネジメントを担当。プロダクト開発に関わったことをきっかけにPdMを志し、前職では同領域の新規サービス立ち上げで要求・要件定義から開発優先順位の策定、外部連携、UI/UX改善までをリード。2025年12月にカオナビ入社。
このプロジェクトに、HR業界未経験の入社時からPdMとして携わられてきたのですね。
はい。2025年の12月に入社して、3か月後の翌年3月から立ち上げにジョインさせてもらいました。
というのも、入社時に「即戦力としてすぐにプロジェクトを率いるよりも、まずはドメインの知識をつけ、他のチームの体験もしてカオナビへの理解を深めたい」という要望を伝えていたので。その分の3か月がリードタイムとしてあった形です。
そもそも、飲食業界×SaaS領域で10年以上のキャリアを積んできた中で、HR領域という全く異なる業界のカオナビを選んだのはなぜですか?
入社当初の想いはnoteの入社エントリにも書いたのですが、それ以外の部分では、自分自身が管理職を経験したときに「1on1をどう行うべきか」「チームの力を1+1=2以上にレバレッジをかけていくには」ということをすごく考えていて。カオナビのプロダクトはそういった場面で組織にとって大きな力になると思ったからです。
そこに面白さを感じた点と、HR領域には特有の定性的な情報が無限にある中で、答えがない難しさに挑戦していくことがやりがいにつながるとも感じました。
実際にこれまで積み重ねてきたドメイン知識の武器を手放してみて、想像と違っていた点はありましたか?
カオナビのようなHRテックの領域には、本で読む知識の何十倍も、それこそ「答えがない」現場のリアルが沢山あると感じます。だからこそ、入社当初はインプット量が多く、頭がショートしかけたこともありました。
今は「広く理解していく」よりも「一つを深掘りすることで数珠繋ぎのように理解をしていく」という手法を意識することで、理解度が加速しているのを感じます。
環境は用意されている、ただし進め方は自由。裁量の大きさが「取りに行く人」の成長を加速させる
入社当初、カオナビの環境で「これがあったから動けた」と感じたものを教えてください。
カオナビの強みでもある「AI活用に積極的な環境」はかなり大きかったですね。
これからの時代、PdMやエンジニアにとってAI活用は必須スキルです。もちろん基礎知識のインプットは個人の努力次第でもある一方で、「AIを活用しやすい環境づくり」においては、会社としての意思決定やメンバーの強い想いが大切だと思っています。
その点、カオナビは蓄積されたあらゆる顧客の声(VOC)を一括してAI分析できる仕組みが整いつつあるので、HRのドメイン知識に詳しくなかった自分のような人でも、かなりスピーディーに顧客理解が可能です。
また、オンボーディングも手厚く、登竜門のように様々な機能に触れる経験をさせてもらったこと、新しいメンバーを歓迎する雰囲気があり、質問しやすい環境や、ナレッジをシェアするためのドキュメント文化が根付いていることもありがたかったです。
用意されている環境を、田中さんご自身はどう使いにいきましたか?意識的にやっていたことがあれば教えてください。
やはりAIの活用は第一でした。ここまでもお話ししているように、カオナビはドキュメント文化が根付いている分、蓄積された情報量が膨大にあることが強みです。その中で、自分が求めているものをどうすればピンポイントで取りに行けるかは、かなり個人の裁量に任されている組織です。
だからこそ、AI活用のスキルはパフォーマンスを左右する大事な要素だと実感しています。
裁量が大きいのはカオナビの特色ですが、他にも感じた部分はありますか?
ナレッジ共有やフィードバックの場は豊富ですが、形式を強制されないのがカオナビの良さですね。もちろんPRD(プロダクトの要求仕様書)のフォーマット自体はありますが、項目を埋めることが目的化してしまっては本末転倒です。
カオナビでは、フォーマットに従うことよりも「なぜやるのか」「どういう方向性で届けるのか」をクリアに伝えることが求められます。レビューという機会も、提出して終わりではなく、社内の「ガードレール」として事故を防ぎつつ、不安な論点を投げかけて建設的な議論をするための場なんです。
進め方の自由度が高く、レビューという場も自分たちのプロダクトを良くするために使い倒せるので、経験のあるPdMにとっては非常にやりやすい環境だと思います。
顧客理解の解像度はチームで共有。仮説とファクトありきの意思決定
具体的なプロジェクトでは、HR領域の知識がない状態からの顧客理解をどのように進めていったのでしょうか?
自分自身が顧客を理解するために初めに行ったのは、お客様の商談の動向や録画データの分析です。一方で、チームとしてはエンゲージメントのために週に一度「オタ活会」というものを実施していまして。これをかなり大切にしています。
※こちらの画像は動画を見ながら気づいたことを付箋に貼り付ける時間で出てきた意見です。この後、深堀したいテーマを選択して、深ぼっていく会話が行われます。
「オタ活会」は、「エンゲージメントのオタクになろう!」と僕から開発メンバーに声をかけて始めたのですが、PMMがお客様と商談を行っているデータをエンジニアと一緒に確認しながら、気付いたことをとにかく付箋に書き出して議論する場です。
PdMだけが顧客の解像度が高い状態では、結局エンジニアへの伝言ゲームが発生してしまうもの。一緒に解像度を高めたほうが、絶対的にコミュニケーションのスピードもプロダクトの開発スピードも速くなると思っています。
単に機能や業務プロセスを確認するだけでなく、「なぜエンゲージメントを利用することになったのか」「そもそもどんなモチベーションがあるのか」といった顧客心理の背景まで汲み取って議論することを大事にしています。
また、営業メンバーも任意で参加できるため、顧客と営業の双方から一次情報を取得したほうが、よりチーム全体の解像度が上がると実感しています。
前職と比べて直感で判断できない領域だからこそ、意思決定の仕方で変わったことはありますか?
これまでは10年積み重ねてきたドメイン知識に頼っていたので、これからはそういった意思決定をしたくないという想いがありました。
だからこそ、カオナビではお客様の要望や現場で起きているリアルな課題を知った上で意思決定をしていくことを大事にしています。先ほどの「オタ活会」もその一環ではありますが、一つの事例に対して仮説を元にチームでファクトを把握し、開発を進めることは意識していますね。
具体的な例として、「お客様がとある機能に全く気づいてくれなかった」という事実があった時に「なぜ気づいてもらえないのか」を調べたところ、多くの傾向としてステータスを変えていないという課題が見えました。すると「ステータスの段階でも機能が見えるようにした方がいいのでは」という議論や仮説が生まれる。
そこで実際にお客様の商談データを確認し、「明らかにこれだ」といったファクトと結びつくのであれば、改善するための施策を進めていく、といった流れです。
リスペクトの上で成り立つPMMとの連携と「顧客より顧客を考える」プロダクトづくり
先ほどPMMのお話も出ましたが、PdMである田中さんはどのように役割を分け、どんな議論をしているのでしょうか?
PMMには商談でお客様の要望をしっかり聞き取ってもらい、プロダクトに関するヒアリングなどの際は自分も同席するような形に役割を分けています。
週に2回打ち合わせをする機会があり、PMM側はお客様の反応やマーケティングプロモーションの企画、PdM側はプロダクトの進捗などを話しながら、赤裸々に意見交換をする場面も多いですね。
それぞれの立場から、議論が白熱することもあるのでしょうか?
PMMの「こうした方が良い」という意見に対して、PdMの自分も真っ向から「こっちの方が絶対に良い」と衝突する場面はあります。
お互いをリスペクトしているので喧嘩にはならないですが、「確かにここはこういう意図があった方が良いからこうしよう」と着地して、すごく建設的な議論ができていますね。
ただ、プロダクトの「やる・やらない」の最終判断は自分にあるので、基本的にはロードマップをこちらから見せて合意を取るような進め方です。
毎回PMM側の期待値を上回ってプロダクトのグロースをしていきたいと思っているので、想定スケジュールよりも早くリリースできたり、想定以上の機能を追加したりした際には喜んでもらえるのが嬉しいです。
カオナビのバリューである「顧客より顧客を考える」という言葉を、田中さんは日々の仕事の中でどう解釈していますか?
お客様の課題に対して、全てを機能だけで解決しようとせず、運用とセットで考えながら、常にプラスαをご提案したいという気持ちを持つことだと思っています。
そもそも「どう運用されるのか」が理解できていないと、プロダクトは作れないはずです。カオナビのサービスは、お客様が本来はアナログでしなければいけない業務を効率的に置き換えるもの。
だから「システムがない場合にはどんな業務をどんな風に行うのか」「例えば Excelだったらどうやるんだろう」と常に妄想しながら「何がカオナビで置き換えられるのか」までを考え切ることが、プロダクトを作る上では大切だと思っています。
未経験領域での入社から、プロダクトを任され、結果を出すまで
入社1年を待たずに「カオナビエンゲージメント」という重要なプロダクトを任されることになった田中さんですが、どんな経緯で、そのときはどう受け止めましたか?
入社する際に「プロダクトを任せたい」ということは初めから言ってもらっていました。自分自身も機会があればNOとは言わずに取りに行く姿勢でこれまでやってきたので、特に違和感もなく受け止めました。
むしろ「組織のレバレッジをどう効かせていくか」という課題は自分自身も過去のキャリアで痛感した部分だったので、今回こうしてカオナビエンゲージメント」という手段を用いて解決できるのはすごく楽しみだなと思いましたね。なので「はい、やりたいです!」と。
その上で入社後に3か月のオンボーディング期間を用意してもらったので、自分はどうやって最大限インプットをして成果を出せるかを考えて取り組んでいました。
前例の少ない案件だったなかで、リリースが前倒しになったと聞きました。何がそれを可能にしたと思いますか?
現状を早期にキャッチアップし、なるべく早く案件の交通整理をしたことで、開発メンバーのすべきことと、ビジネスサイドの合意形成をスムーズに進められたことが大きかったと思います。
初めに感じたのは、そもそも開発サイドとビジネスサイドの期待値コントロールや情報の伝達がしっかりできていないという違和感でした。
そこで「やる・やらない」の断捨離と、機能としてのスコープを整理し、開発メンバーの窓口となって、ビジネスサイドのコンセンサスを取り……。その結果、元々は6月末に予定していたβ版のリリースを、5月中旬に前倒しすることができました。
PdMの仕事において一番求められるのは、意外にも社会人としてのポータブルスキルだと言われています。その点、これまで飲食のドメインで営業から上がってきた自分は、仲間と円滑にコミュニケーションを取っていくことが強みになっているのかなと思っています。
「会社を使って成長する」とは。未知のドメインに踏み込んだからこそ生まれる、キャリアへの自信
「会社を使って成長する」という言葉について、田中さんはどう捉えていますか?
「Talent intelligence™(タレントインテリジェンス)」という新ビジョンを掲げるカオナビでは、自らもAI活用のシーンをどう学んでいくか、AI でどうやって組織の中でコミュニケーションを取り、パフォーマンスを出していくかという成長の機会があることこそが、大きな財産になると思います。
また、カオナビは決まった「型」がないからこそ、PdMとしても個人の裁量と知見で「こう改善できるのでは」という気づきをどんどん実装できる場です。
その経験がキャリアの自信になっていくと思うし、そこから更なる成功体験をして、今後に生かしていけるはずなので、「会社を使って成長する」という点は自分でも日々意識していますね。
最後に、未知のドメインへの転職に不安を感じているPdM・ディレクターの方に、メッセージをお願いします。
「ドメインを変える」というのは大きなジョブチェンジですし、あえてやらなくてもいいことなのかもしれません。
でも、PdMという仕事は、経験の掛け合わせが新しいソリューションやアイデアにつながるので、若手のPdMの方にとっては特に、様々な経験をして視野が広がることは強みになるのではないでしょうか。
一つを深掘りするも良いし、広く浅くから始めてどんどん深掘りしていくやり方もあると思うので、それぞれの納得のいく形でトライしていただきたいですね。