プロダクトは作れる。でも、その価値を市場に届けられているか——。カオナビが問い直した先に、2025年10月「プロダクトプランニング本部」が誕生しました。
背景にあったのは、プロダクトの価値をいかに事業成果へと結びつけるかという課題意識です。単によいものを作るだけでなく、プロダクト戦略の策定から開発組織への浸透、さらには市場への届け方までを一体で設計する取り組みが進められています。
その中核を担うのが、「社内起業家」のような位置づけでプロダクト戦略を具現化する、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)です。
戦略と実行をつなぎ、価値を市場へ届け切るためにどのような役割を果たしているのか。今回は、CPO プロダクトプランニング本部長の井上さんと、PMMの保田さんに、その役割や取り組みについて話を伺いました。
「この開発は事業成長につながっているのか」という問いから見直した組織体制
まずは、お2人の役割について教えてください。
2025年10月に新設されたプロダクトプランニング本部の本部長として、プロダクト戦略の立案と実行を統括しています。
目指しているのは、単に開発部門で「よい」プロダクトを作るだけではなく、その価値をきちんと事業成長へと変換することです。そのために、営業の現場で、そして市場でどう勝つか、お客様にどのように届けるかまで設計する役割を担っています。

CPO
プロダクトプランニング本部長
井上 英樹
ECサイト構築・支援企業にて、主に大手企業向けECサイトの構築を担当。その後、製品開発部門にて執行役員としてプロダクト開発と事業推進を統括する。2025年に当社に入社し、プロダクトマネージャーとしてプロダクト戦略を推進。同年よりプロダクトプランニング本部長、2026年4月にCPOに就任。
主にPMMとして、新しい機能やサービス開発のための市場分析、競合調査、顧客課題把握などの企画業務からその実行・推進に携わっています。
加えて、現在はAI推進室を兼任し、プロダクトロードマップにAI技術をどう組み込むかや、その商品設計・価格設計について、開発メンバーとともに検討・推進しています。
なぜ、プロダクトプランニング本部が新設されたのでしょうか?
もともと私たちは、開発組織であるプロダクトデベロップメント本部内に所属していました。
そこから独立したのは、カオナビのプロダクト戦略を改めて明確に描き、プロダクトに落とし込みたかったためです。開発部門と組織を分けることで、KGIやKPIの策定を含めて自律的に進められる組織にしたいという考えから、体制変更に至りました。
また、戦略を策定するだけでなく、作ったプロダクトや機能の魅力を、PMMのメンバーを中心に「届け方」まで一気通貫でデザインする組織にもしたかったんです。それが、組織新設の大きな意図としてあります。
体制変更前は、具体的にどのような課題を感じていましたか?
プロダクト戦略は、会社としての大きなビジョンや達成したいゴール、目標数字を落とし込んで設計していくものです。
しかし、社内の開発部門に20を超えるチームが存在し、それぞれが開発を進める過程で、ニュアンスや認識のズレが生じる場面もありました。その結果、最終的に出来上がるものが、ストレートに事業成長へとつながりづらい状態になっていたのです。
この課題を解決するためには、プロダクトのビジョンを今一度しっかりと定め、開発組織全体に浸透させていく必要があると考えました。
体制変更前はPMMとしてプロダクトデベロップメント本部に所属していて、当時から現場目線で「カオナビの開発組織はとても強い」と感じていました。

プロダクトプランニング本部
プロダクト戦略部
PMM
保田 拓斗
新卒で広告代理店に入社し、営業・企画を中心に幅広い業務を経験。部長として組織マネジメントにも携わる。その後、2024年末にPMMとしてカオナビへ入社。現在はプロダクト戦略の立案・推進に携わるとともに、AI推進室を兼任。
ただ、個々のチームがそれぞれの領域に取り組み、各機能を磨いている一方で、会社全体で見たときに局所最適になってしまっている面もありました。
会社の事業戦略、プロダクトを届けるべき対象、解決したい顧客課題が1本の軸としてつながっておらず、もったいないなと葛藤を感じる場面も多かったですね。PMMとして、そのあたりの改善にも取り組みたいと考えていました。
戦略浸透からGo To Marketまで、顧客に価値を届け切るための取り組み
これまでのプロダクトプランニング本部としての取り組みを教えてください。
私たちが掲げるミッションは「顧客に価値を、事業に進化を」です。
まずは本部の立ち上げとともに、私たちの考えや、策定したプロダクト戦略を開発組織に伝えていきました。その際、全員を一斉に集めて説明しても各自の仕事と結びつけて捉えにくいかもしれないと考え、チームごとの役割期待も含めて個別に話す場を設けたんです。
その後も、都度連携しながら開発を進めています。
体制変更や取り組みを通じて感じた良い変化はありますか?
あらゆる物事の意思決定を、よりスピーディーに行えるようになりました。その要因は2つあると考えています。
一つは、ミッションやプロダクト戦略に紐づけて「今はこれをやるべきだ」というメッセージを率直に伝え、話し合えるようになったこと。もう一つは、市場分析のうえで企画の“確からしさ”が5割を超えたらまずは実行してみる、という思い切った決断もできるようになったことです。
どんなに筋のよい企画も、100%成功するとは限りませんから、まず市場に出して検証することこそ重要だと考えています。今では、プロダクトを通じて事業成長に貢献する一連のプロセスを、開発部門とうまく役割分担できるようになってきたと感じています。
現場目線でも、体制が明確になったことによって物事が進みやすくなったと感じています。
開発する機能の内容にもよりますが、これまでは市場調査を行って企画を立てた後、関係者との調整や最終的な社内承認を得るまでに数ヶ月かかることもありました。
もちろん、現在も社内のメンバーとの丁寧なコミュニケーションは大切にしていますが、戦略に紐づいた形でよりストレートに議論できる場面が増えたと感じます。
現在、開発部門との連携以外にも力を入れていることはありますか?
カオナビとアライアンスを組んでいただいているパートナー企業のビジネスも掛け合わせたGo To Market戦略の設計に力を入れています。
アライアンスというと、営業活動のプラスアルファとして捉えられることが多いかもしれません。しかし私たちにとっては、カオナビのプロダクト戦略を考えるうえで欠かせない要素だと考えています。
その理由とは、どのようなものでしょうか?
カオナビが提供しているのは、タレントマネジメントをはじめ、労務、勤怠、採用管理のシステムです。
カバーする範囲は広げつつあるものの、HRには他にいくつもの領域が存在し、それらをカオナビのプロダクトですべて担うのは現実的ではありません。また、一つひとつの領域も、お客様の業種やビジネスモデルによって求められる機能はさまざまなため、ドメインごとに深い知識が必要になります。
そこで、パートナー企業が提供する他領域のシステムと連携することによって、お客様に対して大きな価値が生み出せるのです。
最終的に目指すのは、カオナビがHR領域におけるデータのハブになること。そういった事業インパクトまで見据えて、カオナビのアライアンス事業をふまえたプロダクト戦略に取り組んでいきたいと考えています。
カオナビのPMMは、プロダクト戦略を具現化する「社内起業家」
カオナビのプロダクト戦略において、PMMはどのような役割を担っているのでしょうか?
カオナビのPMMは、いわば「社内起業家」のような役割だと捉えています。
企業の数だけ目指す姿や解決すべき課題があるゆえに、タレントマネジメントには「これをすればいい」という一律の正解が存在しません。ですから、プロダクトに実装したほうがよい機能は無数に考えられるものの、それが売れる保証もないんです。
そうした前提の中で、PMMは市場のニーズやカオナビとしての事業戦略にもとづいた機能開発の意思決定をしなければなりません。また、実行するからには、投入したリソースを成果に還元する必要もあります。
まさに、会社の中で一つの事業を作るようなイメージです。その責任の重さは、起業家に通じるものがあると考えています。
直近で、特に印象深い意思決定のエピソードはありますか?
私がアサイン直後のプロジェクトで、すでに経営陣への上申も済み、社外向けロードマップにも公開されていた複数の機能開発を、一旦すべてリセットして新たに作り直すという決断をしたことがあります。
カオナビが目指す世界や、事業戦略、それに紐づくプロダクト戦略を体現できているか、また顧客が本当に求めていることはなんなのか。それらを改めて突き詰めて、これまで作ってきたものを見たときに、それが最良の選択肢だと考えたんです。
たとえ「美しい計画」であったとしても、本質的な価値が伴わなければ意味がない。周囲への説明にもかなりの時間を割きましたが、それ以上に「プロダクトとしての正しい姿」を優先できた。振り返ると、それが最も印象深い経験の一つになりました。
本部長の井上さんから見て、カオナビのPMMの特徴や強みはどこにあると感じますか?
PMMは「企画を立てる」イメージが強いかもしれません。一方で、カオナビのPMMメンバーは全員、お客様との打ち合わせやインタビュー、商談の場に数多く参加するなど、現場感を大切にしていると感じます。
週に1回、本部内の会議でさまざまなテーマで議論する際も、そこで出てきたアイデアに対して「こんなお客様にインタビューしてみたら?」「それ以上考えるよりも、直接聞きに行ってみようよ」といった意見がよく出ます。
精緻な戦略を先に組み上げるのではなく、自ら一次情報を取りに行こうとしているんですよね。
カオナビのPMMは誰しも、一つひとつの企画を「絵に描いた餅」にはしたくない、という思いが強いんです。今はAIでもそれらしい事業計画書が作れてしまう時代だからこそ、考えるだけで終わってしまうと、PMMとしての存在価値は限りなく薄れてしまいます。
そのアイデアが本当に正しいのか、本当に市場に受け入れられるのか、自分たちで動きながら検証したい。そんな意志を持ったメンバーが、カオナビには集まっていると感じますね。
さらなる成長へ向けて。大きな裁量とビジネス視点で新しい一手を生み出す
カオナビでPMMとして働く魅力は、どこにあると感じますか?
業務の間口が広く、これまでのスキルや経験を活かしながらも、どんどん越境してできることを拡張していける点にあると感じます。
PMMとして、「これをやってはいけない」と否定された場面は一度もありません。事業成長に寄与するのであれば進めた方がいい、というスタンスで、ほぼすべての判断は個人の裁量に任されています。
また、外部の専門家に協力を仰いだり、社内メンバーの追加アサインについて相談したりと、プロセスの中でかなり柔軟な選択肢を取れるのも大きな特徴です。メンバー全員が、それらの選択肢を前提として持っていると思えているのが、カオナビのPMMの強さなのかもしれません。
カオナビのPMMは、一般的なPMMの業務範囲よりも非常に広いと思います。メンバーにいつも伝えているのは、プロダクトを軸にどのように事業貢献するか、いかに成果を生み出すかに責任を持って取り組んでほしいということ。そのためであれば、権限を惜しまず与えたいと考えています。
今後、カオナビのプロダクト戦略を担うメンバーには、どのようなスキルや姿勢を期待しますか?
事業貢献や目指すべき数字に対して、当事者意識を持っている方を求めています。
事業の種類は問いませんが、ビジネス的な視点を持ち、定量的な目標を追いかけてきた経験は、必ず活きるはずです。さらに、営業やマーケティング、開発側とも議論しながら、全方位に動ける姿勢も重要だと考えています。
今のカオナビにジョインすると、どのようなことができるのか聞かせてください。
カオナビはARR100億を超え、一見完成された組織に見えるかもしれません。でも実際は、プロダクトラインの拡張もAI活用も、まだまだ「0→1」で型を作らなきゃいけないことだらけです。
用意されたタスクをこなすのではなく、自分で型を作りながら物事を進められる。そして、自分の担当領域だけでなく、事業全体を見ながら戦略と実行の両方に携われる。今、カオナビの仲間に加わっていただくと、そんな環境下で仕事ができます。
カオナビが2030年に向けてもう一皮むけるためには、今の機能やサービスの延長線上だけでは絶対に到達できません。だからこそ、今の私たちにはこれまでの型を破るような、新しい「飛び道具」が求められています。
幸い、カオナビには安定した企業基盤があります。それを使い倒して、自分のこれまでのキャリアで培った知見や「こうあるべきだ」という意志を、プロダクトを通じて形にしてほしい。
「用意された役割をこなす」のではなく、自ら事業の勝ち筋を描き、実行することに手応えを感じる方。 そんな方にとって、今のカオナビは最高に面白いフェーズだと思います。