自己研鑽カルチャー、全社に広がる理由とは?その裏側を公開!

Interviewee

松下 雅和

小松 史明

大倉 悠輝

南 悠輝

2021.10.5

誰もが聞いたことくらいはある「事業は人なり」という言葉。企業が成長していくにつれて、この意味をより深く考える必要があるように思います。優秀な人材の採用だけでなく、入社後のメンバーたちの能力向上をいかに実現させていくか。経営者や人事担当の悩みは尽きません。

そこで、社内に根付く“自己研鑽カルチャー”について語り合う座談会を企画しました。集まったのは「日々の学習による技術向上は不可欠」とストイックに話すメンバーたちとCTOの松下。しかし語られたのは厳しい環境ではなく、自律して学び続ける風土が全社に広がっているということ。社内で業務時間内外に繰り広げられている、勉強会や発表の場を作り続ける取り組みの数々から、その理由を読み解きます。

CTOを務める松下が強調するのは、「社員のみんなが活用できるような『自己研鑽』の場をつくることが重要」ということ。メンバーが増えれば増えるほど、研鑽を続けられる人ばかりではなくなっていきます。そんな中でも、社員同士が学び合い、お互いが向上しあえるような環境づくりとは。

制度としての“余白”プラス“緩さ”で創る、自己研鑽の雰囲気

当社のエンジニアはかなり以前から自発的に「勉強会」を開催し、個々人の技術や知見の向上を図ってきたというイメージがあります。どのように実践を続けているのか、教えてください。

プロダクト本部 サービス開発部
Strategyグループ
テックリード
南 悠輝
2016年に自社開発MAツールを提供する会社でウェブエンジニアとしてキャリアをスタートし、サーバーサイドからフロントエンドまで幅広く経験。2018年4月にカオナビへ入社し、CI/CDの導入などを経て現在はテックリードとしてフロントエンド開発を牽引。自動化や効率化が得意。

エンジニア勉強会を続ける上で欠かせない「スナバ」という社内の制度があるので、まずはこちらから紹介させてください。

「スナバ」とは、週に2時間まで認められている、業務時間内に利活用できる自己研鑽タイムです。業務に関して自らを高められる活動なら、何でもやっていい時間です。

例えば私の場合は、エンジニア勉強会のためのネタ探しに使うことが多いです。他にも新たな社内ツールの開発に使うこともあります。エンジニア組織としての作業効率を上げたり、業務改善につながるデータを定期的に取得したり、といったことをこの時間を活用して実現しようとしています。

なるほど!面白い制度ですが、そもそもどのようにして生まれたのですか?

プロダクト本部
CTO
松下 雅和
SIer2社を経てゲーム/メディア/広告事業の会社に入社。その後、モバイルゲーム・スタートアップにてCTOとして従事。累計数千万ダウンロードにもなるゲームの基盤を支えてきた。2020年2月にカオナビに入社し、様々なプロジェクトの開発を支援。同年9月にCTOに就任。

松下

誕生した背景にあったのは、自己研鑽の時間を業務時間内に組み込むことで社員を支援していきたいという意見です。さまざまな形を検討した結果、スナバの仕組みが誕生しました。

ただ、誕生当初の想定は少し違っていました。技術品質の低下に伴う開発速度の低下や事業リスクの増加を回避するため、仕組み化やドキュメント整備、開発環境改善、CI改善、リファクタリングなどを目的とした「技術品質を向上するための活動時間」というのが最初の姿です。

この設計ではイマイチ効果が出なかったんです。目的が「カオナビをより良くすること」だった点が利用のハードルを高くしており、この2時間を使いきれない人が少なからずいたんです。

改めて、今日集まっているメンバーたちとも相談し、「カオナビのために限定するのではなく、社員一人ひとりの自己研鑽に幅を広げ、スキル向上のためにも使うことができる」という形に変更しました。

その後、自分たちの得意領域を広げたり、扱ったことのない技術を検証したりと、スキル向上のためのさまざまな動きが見えるようになりました。他にも、南さんが言ったようなツール開発に使ったり、エンジニア勉強会をスムーズに運営するための準備に使ったりというのも増えた印象があります。

プロダクト本部サービス開発部
エンジニアリングマネージャー
小松 史明
新卒入社した会社を退職後、アフィリエイトサイト運営を通じてWeb制作スキルを習得し、都内のWeb制作会社に入社。フロントエンドエンジニアとして開発業務に従事。2019年にカオナビに入社。その半年後に書籍「カイゼン・ジャーニー」から感銘を受けスクラムマスターへと転身。

小松

自己研鑽や技術向上のための勉強は、業務時間外の自分の時間を使って勝手にやるというのが多いと思います。でも当社は、業務時間を使って自己研鑽することで自分を成長させ、その成果がまわりまわって、会社に価値として還元されると考えています。

会社が率先して制度を作り、一人ひとりの自由な動きを受け入れて共有してくれること自体が、素敵な文化だなと思っています。

確かに使い方には悩みそうですが、それを越えて一人ひとりが良い形で活用できるようになっているとしたら、凄いことだと感じます……!

小松

そうですね、人によって使い方は結構違いがあるようです。

私にとってスナバの位置付けは、業務時間の中にある「余白の時間」のイメージですね。他のメンバーに声をかけて、一緒に調べ物をする、という使い方をしています。これ、業務時間内でやる人もいるかもしれませんが、誰もがやりやすいわけではないですよね。「余白の時間」と捉えられるからこそ、やりやすいなと感じています。

プロダクト本部 サービス開発部
Platformグループ
マネージャー
大倉 悠輝
大手メディア系サイトのシステム開発・PjMを担当。その後、スタートアップ企業で広告・開発・運用までサービス運営の全行程を担当。動画配信サービスの開発でプロダクトマネジメントを知り、コミュニティ活動にも従事。2019年3月にカオナビに入社し、システム連携関連の案件を主に担当している。

大倉

「社内に自己研鑽カルチャーがある」と言っても、常に自発的に研鑽できる人しかいない、というわけでもないんですよ。だからスナバは、どんな社員でも気軽に毎週2時間を業務以外に使えるように設計されたのだと、私は解釈しています。以前より多くの人が、自己研鑽という目的で、自己学習や合同勉強会の時間を意図して作れるようになっているようです。

また、自己研鑽を義務化するのは、違うと思うんです。「スナバの2時間を使ってきちんと勉強しなさい」という感じになると、もうそれは“自発的”ではなく、“事実上の業務”となってしまいます。そうではない雰囲気が持続するようにしたいですよね。

スナバを活用した勉強目的のミーティングは、業務時間内の他のミーティングとはわかりやすく差別化するように意識したいと思っています。たとえば「出席は必須にしない」「発表の順番を指名制にしない」といったちょっとした工夫ですね。こうして一定のゆるさを確保することを大事にしています。

職種や立場を超えて広がる、研鑽し合う仕組み

スナバという制度によって、先ほどから言及されている勉強会がどのような良いものになっているのか、お聞きできますか?

はい、改めて「エンジニア勉強会」について話しますね。これは約2年前、私自身がやりたいと言って始めたものです。

前職でも同じようなエンジニア勉強会があり、良い取り組みだと強く思っていたんです。それで入社直後から始めるきっかけを探し、2019年のタイミングで大きな組織改変があったところで声を上げてみました。

結果としてこの組織改変が非常に良いタイミングになったと思っています。それまでは職種ごとにチームを構成していたのですが、そうではなく、職種の異なるメンバーでチームを構成することになったんです。

「エンジニア同士」での情報共有の場が日常の中で減ったので、勉強会の場の重要性が高まりましたね。

小松

当初はエンジニアの一部、数人程度が参加する形で、会議室に収まるくらいでしたね。ですが次第に参加者が増え、オープンスペースで行うようになりました。それもあって次第に、ディレクターなど他の職種の方も気軽に参加するようになっていきました。現在はエンジニア勉強会といいつつ、誰でも参加できる形で運営していますね。

大倉

小松さんが言うように、オープンスペースで開かれるようになった頃、非エンジニアのみんなも覗きやすくなったようでした。ちなみにディレクターの私は、強い興味があり当初から積極的に参加していたんですけどね(笑)。

エンジニア勉強会という名前なのに、非エンジニアにまで広がるのは面白い動きですね。今では参加人数がかなり多いとお聞きしましたが、どのようにこの輪を広げてきたのでしょうか?

知的好奇心の強いメンバーがそもそも多い、という点が結局は大きいのかな、とも思うのですが……(笑)。運営面で強いて言うなら、コロナ禍にオンライン開催へ切り替えたことが大きいですよね。また、コロナ禍ではフルリモート勤務になったので、コミュニケーション面で感じ始めた「孤独」や「さみしさ」も参加のきっかけになっていると思います。

最近では40~50人も集まるような勉強会に成長しましたね。

小松

エンジニア勉強会が定着し、みんな隔週水曜で参加のための時間をとり当たり前に参加してくれるようになったので、運営としてやっていることは事前にアジェンダを作るくらいです。

とはいえ、課題ももちろんあります。たとえば、成果や知見を発表するエンジニアがある程度固定されてしまっているという点です。南さんの登場回数はかなり多いですよね(苦笑)。今後は、入社から間もないメンバーも積極的に発表しやすい、カジュアルな空間にできればいいなと思っています。

ちなみにこのエンジニア勉強会から派生した、別の勉強会もあるのでしょうか?

大倉

ディレクターの勉強会を始めました!

私たちのコンセプトは「自分の当たり前をみんなに知ってもらおう」です。新しいことを勉強して共有する、というのはなかなか難しいので、普段の取り組みから発表内容を出す、というテーマでやっています。

例えば、「当たり前にやっていること」をノウハウとして共有する、といったことですね。自分が所属するチームでは当たり前のことでも、他のチームでは当たり前ではないこともたくさんあります。そういったことをまずはシンプルに共有してみる、そんな場にしています。まだ3回しか開催していないので、これから盛り上げていきたいです。

最近の発表内容で、印象に残っていることはありますか?

大倉

「ロードマップづくり」の進め方を発表してくれたメンバーがいて、面白かったですね。プロダクト本部から割り当てられた抽象的なテーマを、プロジェクトとしてどのようにマイルストーンやタスクを設計し、どのような順番で回していくのか、という話です。

実は最近まで、ディレクターはロードマップを作ること自体もあまりしていなかったんです。あったほうがいいかもしれないけれど、なくてもなんとかなる、という認識があった。だから、わざわざチャレンジする人がいなかった。たからこそ、勉強会という場で改めて価値を認識できた意義は大きいと感じました。

エンジニア勉強会がこのように社内で派生することは嬉しいことですよね。

本当に、心からそう思います。エンジニアだけではなく、他の職種に派生して会社内の文化に昇華することが、素直に嬉しいですね。

松下

私もこの動きは本当に素晴らしく、頼もしいことだなと、関心しきりです。

過去にいた会社でも、一部の職種では勉強会のような「横のつながりを強化する取り組み」がありました。しかし当社はそうした動きにとどまらず、プロジェクトごとに存在するさまざまな職種に新しい考え方が広まる流れが起き始めています。

放っておくと「暗黙知」にしかならないような話を、広く共有する場が自発的に生まれていっているのは、とても喜ばしいですね。

会社がわざわざ“業務時間外の集まり”を設計する効果

ところで、業務時間「内」のスナバと対照的な形で、「イドバタ」という業務時間「外」の自己研鑽の場を作ったと聞いていますが、業務時間外で会社が場を設計する、というのはどういうことなのでしょうか?

小松

イドバタは完全に業務時間外ですが、業務にも多少からませたテーマ設定を意識して、「よりカジュアルな交流の場」というイメージの場として開いています。Zoomを使い、数人が緩い話題を持ち寄ってライトニングトークをしたりとか、テーマを設定して互いに話し合ったりとかをしています。スナバがあっても、業務時間中にはなかなか学びの時間を持てないという心理的ハードルを感じるメンバーにも、業務時間外だからこそ、肩ひじ張らずリラックスして参加してもらいたいと思っています。

中でも面白かったテーマが「あなたが人生で一番覚醒した時はどこですか」ですね。それも、自分からは普段絶対にこういった話をしなさそうな人にお願いして開催したんです。とても盛り上がりました。

業務時間外なのでお酒も飲みながら参加できるのが魅力でもあります(笑)。

社外活動も奨励、自律的な活動を生む秘訣

他にも「自己研鑽」活動がいろいろあると聞いています、具体的な活動をお聞きできますか?

大倉

私は業務時間も活用して「プロダクトマネージャーカンファレンス」という社外イベントの運営に何度か携わっています。

セッションの企画や登壇者の選定を中心に、昨年は海外からのゲスト登壇者セッションを翻訳・編集して収録動画を制作する、などやっていました。

普段の社内の業務では得られないような経験を通じて、学んだことや得た情報を会社に還元しています。

例えば、「実現可能性だけで物事を考えない」ことを学びました。できる・できないを先に考えて可能性を狭めるのではなく、「このカンファレンスにとって本当に価値のあるものは何か」をまずは振り切って考え、真に面白いコンテンツの実現を目指す議論を進める、というやり方ですね。

松下

大倉さんがやっているような外部イベントの運営や、社外の勉強会企画といった活動は、私自身も前からやっていました。ここで得られるものが、会社に所属しているだけでは得られないということは経営陣も深く理解しているので、もっと広がっていくといいなと思っています。

なので当社では、兼業も推奨しています。外で得たことを持ち帰って、社内の業務で活かしてほしい。双方のフィードバックループを生み出せる重要な活動だと思っています。

最後に、今後、社内でさらに「自己研鑽カルチャー」を浸透させる上で、取り組んでみたいことや意気込みを教えてください。

エンジニア勉強会で、もっといろんな人に話してもらうことですね。

すでに何度も登壇している私自身も、実はそもそも人前で話すことが得意ではありません。登壇を重ねることで、発表することへ慣れたりアウトプット能力の向上に繋げることができています。そうした課題感を持つ人が、より進化するためにエンジニア勉強会を利用する、といった考え方でも全然良いと感じます。

大倉

私はディレクター勉強会をしっかり続け、発展させて、エンジニア勉強会から羨ましがられるような勉強会になるよう頑張りたいですね。

また、社外活動では、プロダクトマネージャーという職種の横のつながりをつくりたいと考えています。社内にとどまることなく、社外のプロダクトマネージャーと関わることで、会社間で良いフィードバックを回せるようなコミュニティづくりに挑みたいですね。

小松

とにかくいろいろなアイデアを出し、それぞれを小さく試して、社内に浸透させていきたいと思っています。スナバもイドバタも、小さなアイデアからはじまりました。こんな感じで、今後もみんなを巻き込んだ自己研鑽カルチャー醸成の場を作っていければと考えています。

松下

社員のみんなが活用できる自己研鑽の場を、継続して用意することが経営においても重要です。

今日集まった3人のような、自主的に行動できる・行動しようとしている社員のアイデアを実現するために、背中を押す。そうすることで、プロダクト開発だけでは得られない知識や考え方、新たな取り組みも生まれ、それが「カオナビ」の開発を推し進める新たな力になればと思っています。

カオナビの採用情報を知りたい方は

編集後記

たとえばスナバという一つの制度が、制度として存在するだけでなく、メンバーの一人ひとりがこの時間をいかにして有効活用すべきか、まわりを巻き込んで考え、実践を続けている様子が伝わりました。そして、派生した新たな制度として、業務時間外を有効活用するイドバタという制度でまた珍しいチャレンジが続いているなど、自己研鑽や勉強会のかたちの追求には終わりがないように思えます。

ベンチャー企業で特に重要視される「自律」が、仕組みとしてまわるような制度が、現場起点で産まれ、さらに、その「自律した現場」が起点となり、新たな制度が産まれていく。こんなサイクルを、組織が大きくなっても失わずにいたいものです。

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